『キングオブコント2015』評 審査システムの変化と「物語型コント」の行く末を見る
#お笑い #ラリー遠田
全体的に低調だった中で、この3組が結果を残したのには理由がある。ロッチはもともとの知名度が高いため、自分たちの世界に観客を引き込むのが比較的容易だった。バンビーノは、14年大会で決勝に進んだ芸人の中で一番の出世頭となり、そこで披露した「ダンソン」というネタも大ヒットしていた。彼らは15年初頭に起こったリズムネタブームを牽引する存在となり、みるみるうちに自信をつけていた。彼らのネタは、たとえ歌や音楽を使っていなくても、観客を気持ち良く乗せることに特化しているという点で、広い意味での「リズムネタ」に分類できるものがほとんどだ。意味よりも「ノリ」が重視されているため、幅広い層に受け入れられやすい。
そして、コロコロチキチキペッパーズには、坊主頭、ピュアで力強いまなざし、よく通る美声という強力な武器を持つナダルがいる。ナダルこそがコロコロチキチキペッパーズの最大の強みだ。彼が舞台に現れるだけで、客席からは「なんかヘンなヤツが出てきた!」という意味のクスクス笑いがもれる。そして、無駄をそぎ落としたごくごくシンプルなつくりのコントで、ナダルの声と表情だけを前面に打ち出していく。彼のなにげない言葉や顔つきのひとつひとつで大きな笑いが起こり、それがどんどん大きくなっていった。
結果的には、10組の中で最も芸歴の浅いコロコロチキチキペッパーズが、バンビーノやロッチを抑えて優勝していた。5人の審査員はこの日、コロコロチキチキペッパーズこそが優勝にふさわしいと判断した。その審査結果は、新たなスターを求める観客や視聴者の潜在的なニーズとも一致していた。審査システムが改められた2015年の『キングオブコント』では、精密に作り込まれた「物語型」のコントよりも、ナダルという怪物が名だたる先輩芸人を蹂躙していくリアルな「物語」の方が魅力的だったのかもしれない。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)
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