“負け犬”の烙印を押された闘犬と少年の逆襲劇!! トルコ映画『シーヴァス』が放つワイルドな魅力
#映画 #インタビュー
――カアン監督の場合は、そのどちらの道も選ばなかった。狭い世界を飛び出して、カメラを手に世界そのものを描く側になったわけですね。
カアン それは面白い解釈ですね。もしかしたら、そうなのかもしれません(笑)。
――次回作は東京を舞台にした『イグアナトーキョー』ということですが、カアン監督の目には今の日本社会はどのように映っているんでしょうか?
カアン 日本は島国であることが大きな特徴です。それゆえに日本は独自性をキープしてきました。何百年、何千年前もの文化や思考性、感性を育んできわけです。独自の美学が発展した社会のように感じられますし、その社会から受ける印象を私はとても好ましく感じています。『イグアナトーキョー』も『シーヴァス』と同様に私自身を反映した作品になると思います。『シーヴァス』では自分の家族を内側から見つめました。『イグアナトーキョー』の場合は、小さな部屋の中に大きなイグアナがいます。イグアナの目で家族それぞれの姿や関係性を見つめることになります。
――『シーヴァス』は犬の目でトルコの現状を描き、次回作はイグアナの視点で今の日本を見つめるわけですね。
カアン いえいえ、『シーヴァス』は犬の目からトルコ社会を描いたわけではありません。犬の目で見たのは、アスランたちが暮らすトルコの旧態依然とした男性社会のごく一部なんです。あくまでも少年と犬の目線から見える範囲内の社会を描いたんです。『イグアナトーキョー』の中で日本社会そのものを描くのなら、私は日本でもっと生活していなくてはいけません。私は日本社会に対してそんなに多くの知識は持ち合わせてないので、日本社会そのものを描くはできません。でも、一匹のイグアナの視線で、ひとつの家族を見つめることはできます。『シーヴァス』で自然界の中で暮らす一匹の犬と周囲の人間との関係性を描いたように、次回作『イグアナトーキョー』は作品の舞台としての東京を描くことができればなと考えているんです。日本のみなさん、また近いうちにお目にかかりましょう!
(取材・構成=長野辰次、撮影=名鹿祥史)
『シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語』
製作・監督・脚本/カアン・ミュジデジ 出演/ドアン・イスジ、ムッタリップ・ミュデジ、オカン・アヴジュ、パーヌ・フォトジャン、チャキル
配給/ヘブンキャンウエイト 10月24日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国縦断ロードショー (c)COLOURED GIRAFFES
http://sivas.jp
●カアン・ミュジデジ
1980年トルコ共和国の首都アンカラ生まれ。映画監督になるため、2003年にドイツへ移住。短編処女作『The Day of German Unity』(10)は複数のテレビ局で放送された。ニューヨーク・フィルム・アカデミーの卒業制作『Jerry』(11)はベルリン映画祭のタレント・キャンパスで上映されている。短編ドキュメンタリー『Fathers and Sons』(12)をベースに本作『シーヴァス』を劇映画として完成させた。実写とアニメを融合させた『イグアナトーキョー』を2016年に東京で撮影する予定。
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