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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 映画『シーヴァス』のワイルドな魅力
闘犬シーンの迫力がめちゃめちゃ生々しい!

“負け犬”の烙印を押された闘犬と少年の逆襲劇!! トルコ映画『シーヴァス』が放つワイルドな魅力

sivas1020闘犬と少年との交流を描いた『シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語』。傷が癒えた闘犬シーヴァスは強敵とのリベンジマッチに挑む。

 犬と犬が闘争本能をぶつけあう闘犬は、大昔から世界各地で行なわれてきた。戦前の日本でも熱狂的な盛り上がりを見せたが、戦後は東京都、神奈川県など闘犬を禁止する自治体は少なくない。さらに近年の動物愛護の風潮から、闘犬場を常設していた高知市の「土佐闘犬センター」は2014年に「とさいぬパーク」と改称している。一部の愛犬家を除いてその迫力に触れる機会が減った闘犬だが、トルコ映画『シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語』はトルコ原産の大型犬カンガールドッグと孤独な少年との交流を描いた感動作。学校や家庭に自分の居場所を見つけられずにいる少年が、試合に負けて飼い主に見捨てられた闘犬の世話をすることに生き甲斐を見出していくという成長ストーリーとなっている。トルコの雄大な自然を背景に、人間と犬とのパートナーシップ、大人社会の入口に立った少年が人生を生きていく上での闘うことの意義について模索する姿が描かれている。東京ロケを予定している次回作の打ち合わせを兼ねて来日したトルコ映画界の俊英カアン・ミュジデジ監督に撮影内情を語ってもらった。

――本作を観ながら、ハリウッド映画『ロッキー』(76)を思い浮かべました。『ロッキー』はボクシング映画ですが、うだつの上がらないボクサーのロッキーと恋人エイドリアンとが人生の再起を目指すラブストーリでもある。本作は“負け犬”の烙印を押された闘犬と少年との“ドッグファイト版ロッキー”だなと思いました。

mainトルコ出身のカアン・ミュジデジ監督。現在はドイツに移住し、ベルリンでカフェバーやコンセプトファッションストアの経営も手掛けている。

カアン・ミュジデジ(以下カアン) 『ロッキー』と並べてもらえて、とても光栄です。私も『ロッキー』は大好きな作品です。『シーヴァス』の犬の名前を決める際にロッキーにしようかと考えていたぐらいなんです(笑)。『ロッキー』の主人公ロッキー・バルボアのキャラクターにも動物的な暴力性があるし、子どものような無邪気な一面もある。その点でも、『ロッキー』と『シーヴァス』はとても似ていますね。もちろん、ハリウッド映画の『ロッキー』は成功の物語です。でも、『シーヴァス』は単純な成功の物語ではありません。『シーヴァス』は“勝つこと”への疑問を描いているんです。勝利とは何なんだ? 勝つことはいいことなのか? 負けた相手はどうなるんだ? 資本主義の世界では勝つことが最優先されているけれども、果たして勝つことがいちばん正しいことなのか。見終わった後で、みなさんに考えてもらいたい作品でもあるんです。

――闘犬の面倒を看ることで成長していく少年が、大人社会の中で苦々しさも知ることになるという深みのある内容ですね。劇中で3度登場する闘犬シーンが大変な迫力ですが、どうやって撮影したんでしょうか?

カアン 犬たちのキャスティングが非常に重要でした。どの闘犬にも、それぞれファイトスタイルがあるんです。分かりやすい試合で説明しましょう。怪我が治ったシーヴァスが、一度破れた村長の犬ボゾにリターンマッチを挑む試合がありますね。あのシーンを撮るために、シーヴァスは全力で相手に向かっていく攻撃的なファイトスタイルの犬を選びました。対するボゾはディフェンスが得意な犬にしました。そうすることで、離れた場所にいたシーヴァスが、ボゾに向かって一直線に走って激突するというファイトシーンを撮ることができたんです。カメラには映らないようにしていましたが、犬たちの口には紐をして噛み合わないようにしました。ですから、犬たちが撮影のために噛み合って実際に血を流すようなことはさせていません。音の効果も大きかったと思います。ファイトシーンの犬たちの唸り声は、いろんな闘犬たちが吠えている様子を録音し、そのときの音声を後から映像に加えたんです。そうすることでリアルに闘っているようなシーンができあがったんです。

――犬たちは演技をしているのであって、実際には噛み付き合ってはいない?

カアン この作品は暴力に対して疑問を投げ掛けているものなので、暴力シーンの撮影のために犬たちを暴力にさらすということはしていません。この映画はドキュメンタリータッチではありますが、ドキュメンタリーではないんです。

――日本ではなかなか知ることができない、トルコの闘犬事情について教えてください。

カアン トルコでは闘犬が現在も存在しています。でも、それは違法なものです。どこでも大っぴらにやっているわけではないけれど、アンダーグランドな形で行なわれています。劇中で、少年アスランとシーヴァスが乗った車が検問で兵士に止められるシーンがありましたよね? 車には闘犬らしい大型犬が乗っている。本当はそのまま通しちゃいけないんですが、兵士は見逃しているんですね。違法行為に対して、目を瞑ることが当たり前になっている。国が違法行為を許しているというのをあのシーンは見せたかったのです。暴力や違法行為を認めている大人たちと、それを許している社会があるわけで、その様子を少年アスランは自分の目で見るわけです。

――トルコの闘犬はアンダーグランドで行なわれているとのことですが、つまりお金が絡んでいるんですね。

カアン もちろんそうです。ギャンブルの対象になっています。トルコの闘犬には、違法的なことの全てあります。トルコにも、日本の映画によく出てくるような“ヤクザ”が存在するんです(笑)

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