映画史上もっともクリーンでスマートな戦争映画! 軍事用無人機の実態『ドローン・オブ・ウォー』
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遠隔操作によるドローンを使えば、戦場で味わう恐怖感もなく、PTSD(外傷後ストレス障害)に陥る心配もないと言われてきた。『ハート・ロッカー』(08)や『アメリカン・スナイパー』(14)の主人公たちは硝煙渦巻く戦場で味わった修羅場体験が帰国後も生々しくフラッシュバックし、ずっと苦しみ続ける。ゲーム感覚でボタンを押すだけのトミーだが、やはり同じように苦しむ。安全な場所から殺戮を重ねているという後ろめたさが、余計に彼を追い詰める。基地でどんな仕事をしているかは機密事項なので、家族に打ち明けることもできない。トミーは、ドローンを遠隔操作するコンテナの中に入るのが恐ろしくなる。
理想の戦場、正しい戦争はありうるのか? 脚本提供した『トゥルーマン・ショー』(98)やイーサン・ホークが主演した初監督作『ガタカ』(97)など、アンドリュー・ニコル監督はハイテク化が進んだ近未来社会における倫理観を度々モチーフにしてきた。『シモーヌ』(02)では理想の女優像を組み合わせたバーチャル女優に実生活を振り回される映画監督の悲喜劇を描いた。米国で小規模公開にとどまった『ドローン・オブ・ウォー』では逆に、命の奪い合いである戦争をバーチャル化してしまうことの恐ろしさを描き出している。『ドローン・オブ・ウォー』が描いている世界はまるでSF映画のようだが、現在進行形の極めてリアルな戦場である。
ボタンを押すだけで自在に他人の命を奪うことができるトミーは、怒りに任せてある人物に殴り掛かる。それは鏡に映ったトミー自身だった。ひびの入った鏡には、トミーの粉々に砕けてしまった良心が映し出されていた。
(文=長野辰次)
『ドローン・オブ・ウォー』
監督・脚本/アンドリュー・ニコル 出演/イーサン・ホーク、ブルース・グリーンウッド、ゾーイ・クラヴィッツ、ジャニュアリー・ジョーンズ R15+ 配給/ブロードメディア・スタジオ 10月1日よりTOHOシネマズ六本木ほか全国ロードショー公開中
(c)2014 CLEAR SKIES NEVADA,LLC ALL RIGHTS RESERVED.
www.drone-of-war.com
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