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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.343

映画史上もっともクリーンでスマートな戦争映画! 軍事用無人機の実態『ドローン・オブ・ウォー』

drone-of-war02ドローン部隊の入隊式。奥に見えるのが軍事用ドローンのリーパー。操縦席がない分、さまざまなセンサーやミサイルを搭載できる。

『ドローン・オブ・ウォー』の主人公トミー・リーガン少佐(イーサン・ホーク)は米国空軍に所属し、F-16戦闘機のパイロットとして大空を駆け巡った。現在はラスベガスに近い空軍基地内にある“戦場”に毎日自宅から通勤している。トミーは窓のないコンテナ(遠隔コントロール室)に入り、モニターを確認しながら無人戦闘機を操る。上官のジョンズ中佐(ブルース・グリーンウッド)から命令が下れば、レーザー照準で標的をロックオンし、百発百中の誘導ミサイル“ヘルファイア”をぶっ放す。これでテロリスト退治の一丁上がり。自宅に戻り、美しい妻モリー(ジャニュアリー・ジョーンズ)とかわいい子どもたちと楽しいひと時を過ごせば、ミサイル発射ボタンを押した際の嫌な感触も忘れることができる。戦場で興奮のあまりゲリラ兵と一般市民を見間違って誤射する可能性も低く、恐怖や怒りの捌け口として現地の少女少年を陵辱せずに済む。とてもクリーンでスマートな戦争のはずだった。だが、そんな生活の中で、トミーのストレスは募り、アルコール摂取量が次第に増えていく。

 ドローン部隊を指揮するジョンズ中佐の説明によると、ドローンシステムは家庭用ゲーム機のXboxがモデルであり、隊員の半分はゲームセンターでリクルートしたそうだ。シューティングゲームで磨いた腕を母国のために役立てることができる。本物のテロリストたちを相手に、TVゲーム以上の刺激と達成感も味わえる。だが、トミーはそんなバーチャル仕様の戦場に違和感を感じざるをえない。その日もトミーはジョンズの指示に従って、粛々とミッションを実行していた。民家を装った爆弾製造工房にテロリストが入ったのをモニターで確認し、ミサイル発射ボタンを押す。あと数秒でミサイルが弾着し、任務は終了だ。ところが、モニターの枠の外にいた子どもがアジトの前に飛び出してきた。「ダメだ! おい、早く通りすぎろ!」。トミーの叫び声は、モニターの向こう側には無情にも届かなかった。

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