“うまいもん”的な愛されるパチモノ映画を発見!? 80年代へのオマージュに溢れた『ターボキッド』
#映画
6月に公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のコーフンが忘れられず、3D、IMAX、爆音上映……と劇場に何度も足を運んでいる熱狂的ファンは少なくない。「あの狂った世界観にもっと浸かっていたい」と願う“ポストアポカリプス”フリークにとって、見逃せないのが10月3日(土)より1週間限定で劇場公開される『ターボキッド』だ。カナダ=ニュージーランド合作映画となる本作は、『マッドマックス』(79)と同じくディストピア化した文明崩壊後の世界が舞台なのだが、『マッドマックス』シリーズがド派手な改造車やチューンアップされたバイクが壮絶な暴走バトルを繰り広げるのに対し、こちらの登場キャラクターたちの愛用車はちんまりしたBMX(競技用自転車)。いわばチャリンコ版『マッドマックス』なのだ。設定を聞いただけで脱力してしまいそうだが、本編を観てみると『マッドマックス2』(81)をはじめとする80年代洋画へのオマージュがたっぷり込められた、掘り出し物のB級アクション快作であることに気づかされる。見るからに低予算なのだが、逆に手づくり感が涙ぐましい。地味な地下アイドルを応援したくなるような、妙な使命感に駆り立てられてしまう作
品なのだ。
どこぞでお蔵入りしていた映画を引っぱり出してきたのかと思えば、米国でも8月末に公開されたばかりのピカピカの新作。この珍作を見つけ、強引にも劇場公開にねじ込んだキングレコードの映像制作部・長谷川英行さんに内情を聞いてみた。
長谷川 「すごく個人的な嗜好なんですが、『E.T.』(82)とかBMXが出てくる映画が好きなんです。日本ではほとんど知られていませんが、若き日のニコール・キッドマンが主演した『BMXアドベンチャー』(83)や世界中のBMX愛好家たちから熱い支持を集める幻の映画『Rad(BMXサイクル・キッド)』(86)も大好き。それでたまたま、BMX、映画をキーワードにネット検索して見つけたのが『ターボキッド』だったんです。サンダンス映画祭で上映されたり、海外ではそこそこ注目された作品みたいですが、問い合わせたところ日本の映画会社はどこもスルーしてたみたいで、即座にサンプルが送られてきました。“BMXに乗った『マッドマックス』”と謳っていますが、『マッドマックス』は改造車やバイクのエンジン音の迫力があって盛り上がるわけで、正直なところ『ターボキッド』の限りなく無音に近いBMXでのチェイスシーンは手に汗握るほどのハラハラ感はまったくありません(苦笑)。主人公たちも悪党たちも、みんな懸命にBMXのペダルを漕いでいる様子は、どこかのんびりしていて、むしろ哀愁を誘う。でも、そうやって肩すかし感を味わっていると、ドラマ部分やBMX以外のアクションシーンが意外としっかりしていて、カウンターパンチをくらうことになるんです(笑)」
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