伝説的バイオレンスアクションの続編がついに公開!『GONIN サーガ』『岸辺の旅』
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今週取り上げる最新映画は、東出昌大主演のスタイリッシュなバイオレンス娯楽作と、黒沢清監督が第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を獲得した話題作。テイストは異なるが、「死」を通じて「生」を見つめ直す機会を与えてくれる、ポジティブなパワーを秘めた2作品だ。
『GONIN サーガ』(9月26日公開)は、石井隆監督が手がけた伝説的バイオレンスアクション『GONIN』(95年)の続編で、前作の登場人物の息子たちを中心に描く新たな物語。社会や組織に適応できない5人組が暴力団・五誠会系大越組を襲撃した事件から19年。五誠会は若き3代目・誠司(安藤政信)が勢力を拡大し、襲撃で殺された大越組若頭の久松の息子・勇人(東出)は、母の安恵(井上春美)を支えながら真っ当に働いていた。だが、19年前の事件で殉職した警官の息子・慶一(柄本佑)がルポライターを装い安恵に接近したことがきっかけとなり、新たな襲撃と凄惨な殺し合いの幕が開く。
ゾクゾクするような男たちの色気と破滅の美学を、石井監督が鮮烈に描く。東出のほかに、桐谷健太、土屋アンナ、『ウルヴァリン:SAMURAI』(13年)の福島リラら人気若手俳優も出演。前作の出演陣からは、殺し屋役の怪演で存在感を放つ竹中直人、俳優を引退したが今作限りの復帰を果たし、執念の演技で圧倒する根津甚八のほか、鶴見辰吾、佐藤浩市も、少ない出番ながら世界観の再構築に貢献した。人物の相関関係がかなり複雑なため、前作を未見の場合はDVDやネット配信などで観賞しておくと、熱い絆とダイナミックな激突を一層楽しめるだろう。
『岸辺の旅』(10月1日公開)は、湯本香樹実による同名小説を黒沢清監督が映画化した究極のラブストーリー。夫の優介(浅野忠信)が失踪してから3年がたち、妻の瑞希(深津絵里)は喪失感を抱えながらもピアノを教える仕事を再開した。だがある夜、突然帰ってきた優介は「俺、死んだよ」と告げる。かつて旅したきれいな場所を再訪したいという優介に誘われ、瑞希は2人で旅に出る。失踪からの3年間に優介が世話になった人々を訪ねる旅を通じて、互いの深い愛を再確認する2人だったが、旅の終わりが近づきつつあることにも気づいていた。
実体化した亡夫に連れられ妻が訪れる3つの旅先で、いずれも「死」にとらわれた人々との関わりが描かれる。つまり、彼岸との近さを意識させられる此岸(しがん)の旅を通じて、「死者とともに生きる」ことの意味を問いかける作品。夫婦や家族をつなぐ愛、死者を大切に思う感情、ささやかなユーモアを前面に出した作りだが、ホラーを多く演出してきた黒沢監督らしく、映像や効果音の控え目な仕掛けを伏線として張り巡らせており、細部まで見逃せない。浅野の超然とした存在感、深津の感情を抑えた演技が素晴らしく、小松政夫、蒼井優、柄本明らとのミニマルなアンサンブルも味わい深い。しみじみと深い余韻を残す、大人向けのファンタジーだ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『GONIN サーガ』作品情報
<http://eiga.com/movie/80548/>
『岸辺の旅』作品情報
<http://eiga.com/movie/80556/>
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