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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.341

“時かけ”に匹敵する新ヒロインが銀幕デビュー! シュールな日常生活『徘徊 ママリン87歳の夏』

haikai_movie03.jpg体調がいいときは、近所の喫茶店で一緒にお茶を楽しむ。お店の人もママリンの症状を理解し、徘徊に気づくと声を掛けてくれる。

 地元・関西地区ではすでに上映が行なわれ、ママリンはアッコちゃんと一緒に舞台あいさつに上がった。大阪での舞台あいさつの2度目はママリンの機嫌が悪く、スクリーン裏で親子ゲンカになったが、京都での舞台あいさつは体調もよく、お客さんたちの前で元気に童謡「浦島太郎」を歌ってみせたという。脳内トラベラーが時のうつろいに翻弄された浦島太郎の童謡を歌うなんて、なんとシュールなことか。

 不謹慎ついでに夢想する。もしかして、ママリンは周囲の人たちが分からないだけで、本当にタイムトラベルしているのではないだろうか。少女時代や看護士時代もやはり不安や辛い目に遭ったはずだ。地面にしゃがみこみたくなるようなこともあっただろう。でも、そんな若かった頃のママリンの前に、朗らかに笑う老婦人が突然現われる。どこか見覚えのある、優しいその笑顔は「大丈夫よ。あなたは87歳になって、実の娘と漫才師みたいなボケ&ツッコミを毎日やるようになるのよ」と伝えている。若き日のママリンがその笑顔に勇気づけられて起き上がると、もう老婦人は姿を消している。2014年の世界でアッコちゃんがママリンの帰りをずっと待っているからだ。

ママリン ここはどこなの?
アッコ 私とママリンが6年前から一緒に暮らしている家だよ。
ママリン えっ、本当? よかったぁ。

 愛しくも、せつない日常生活をカメラは記録していく。
(文=長野辰次)

『徘徊 ママリン87歳の夏』
監督・撮影・編集・製作/田中幸夫 出演/酒井アサヨ、酒井章子、2匹の猫 
配給/風楽創作事務所、オリオフィルムズ 9月26日(土)より新宿K’s cinema、横浜ジャック&ベティほか全国順次公開
(c)風楽創作事務所
http://hai-kai.com

最終更新:2015/09/25 17:00
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