少年Aを闇に戻した『絶歌』出版 幻冬舎・見城氏、太田出版・岡氏の社会的責任は?
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ひどい老人ホームがあったものだ。文春と新潮がともに扱っている、川崎市幸区の介護付き老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」のことだ。
昨年11月から12月の間に、そこに入居していた要介護の男女高齢者3人が相次いで「転落死」したのである。
ベランダの高さは120センチあった。亡くなった女性2人の身長は140センチ台だというから、80代、90代の高齢者が乗り越えることは考えられないと、文春でベテラン介護士が話している。遺書もない。
故意にやったとすれば重大で、悪質この上ない犯罪である。神奈川県警が動きだした。そして、この事故が起きた「すべての夜に勤務していた」介護職員、23歳のAが捜査線上に浮かんできたという。
Aは5月に同施設内で窃盗事件を起こし、逮捕(起訴されたが、200万円で示談が成立)されていたこともあり、心証は真っ黒だと社会部記者が語っている。Aは同月に解雇されている。
だが、逮捕されたときのために取材しているマスコミの囲み取材に対してAは、「疑われているのではないかと不安だ」と冷静に応じている。それというのも、「事故死として処理したため司法解剖は行われず、遺体は火葬されてしまった。いまさら検死のしようもありません。しかも、鑑識すらまともに行っていなかったふしがある」(社会部記者)そうだから、殺人として事件化できなければ警察のメンツに関わるというが、難しい捜査になるはずだ。
このケース以外でも、この施設でひどいことが発覚している。6月にAの同僚たちによる、85歳の女性入居者への虐待である。被害者の家族が母親の顔に血がついていたので施設長に抗議をしたが、反対に「お前らはうるさい」と、怒鳴られてしまった。
そこで、母親の部屋に密かにカメラを設置した。4人の職員たちが母親に「死ね」と暴言を吐き、首を絞め、頭を叩いているシーンを押さえることができた。それを証拠にして川崎市に訴え、4人は自宅謹慎の後、解雇されているが、刑事罰にはならなかったようである。
こんな施設でも、入居者には人気だったという。なぜなら入居金はなしで、月額利用料が全国平均の24万円より安い22万円だから、入居者が殺到した。だが、「食事はひどいし、事故は多発するなど、業界では“フダ付き”のブラック老人ホームです」(介護コンサルタント)。こんな施設が、ほかにもまだまだあるはずだ。終の棲家がこんなのでは嫌だが、そうでない老人ホームは高いだろうし……。
(文=元木昌彦)
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