「池井戸潤をガードせよ!」担当編集がスクラムを組む「江戸川乱歩賞」現場の異様ぶり
#本 #池井戸潤
9月10日、第61回「江戸川乱歩賞」授賞式が帝国ホテルで行われたが、『半沢直樹』(TBS系)、『民王』(テレビ朝日系)、『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)などのドラマ原作で一躍、時の人となっている池井戸潤の周辺は異様だった。
第44回受賞者の池井戸はこの日、選考委員としての出席だったが、編集者らが周囲をガードマンのようにスクラムを組んで取り囲んでおり、名刺ひとつ渡すことができない関係者もいた。
池井戸は『半沢直樹』の高視聴率でブームを巻き起こし、シリーズ最新作『ロスジェネの逆襲』(文藝春秋)も100万部突破する人気作家だけに「他社に仕事の交渉をさせたくない連中がガードを固めていたのでは」と出版プロデューサー。
本来は受賞した呉勝浩が主役であり、選考委員にも妊娠を発表した美人作家の辻村深月ほか、石田衣良や有栖川有栖ら人気作家もいたのだが、ドラマメイカーにもなった池井戸だけは別格のようで、現場では接触を図りたい編集者やテレビマンが必死に食らいつこうとしていた。場内には名刺さえあれば入れるとあって、賞に無関心でも、池井戸との接触目当てで来場した者がいたようだ。
あるテレビマンが池井戸に話をしようと近づくと、編集者が「ちょっと今、大事な話をしているので、後にしてくれませんか」と、まるでマネジャーばりに袖を引っ張って妨害。これには「別に引き抜きを画策していたわけじゃないのに、雑誌編集者と勘違いされたようだ」とテレビマン。
「とはいえ、『花咲舞が黙ってない』も視聴率は平均14~15%と好調ですから、僕らテレビマンにとっても、池井戸さんはビジネスしたい作家なんですよね。ドラマ制作現場はアイデアが枯渇していて、人気作家の原作に頼る傾向はますます強くなっていますし」(同)
実際、この江戸川乱歩賞受賞作は、後援するフジテレビでのドラマ化が定着。そのため、ベテラン作家からは「映像化ありきで、作家がハナからドラマ化しやすい作品をエントリーするケースが増えている」という嘆きも聞かれる。
今回、受賞した呉の『道徳の時間』も、陶芸家の殺人事件現場に残された謎のメッセージをめぐってビデオジャーナリストが過去に起きた事件との奇妙な一致を見つけ、事件の真相に迫るという、まさにドラマ向きのストーリーだ。同作品について池井戸氏は「文章がよくない。大げさな描写は鼻につくし、誰が話しているかわからない会話にもイライラさせられる。さらに、最後に語られる動機に至っては、まったくバカバカしい限りで言葉もない」と酷評。受賞にも反対を表明していたというが、口の悪い出席者からは「池井戸さんは、自分の座を脅かしそうな存在を排除したかったんじゃないの?」なんて声も聞かれた。
又吉直樹のデビュー作『火花』(文藝春秋)が選ばれた芥川賞については、不振が続く出版業界の“思惑”による話題性重視の傾向が指摘されているが、こちら江戸川乱歩賞もビジネス優先で、テレビ向け作品を求める関係者の思惑が錯綜していたようだ。
(文=和田修二)
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