菅田将暉、遠藤憲一に萌える政治コメディ『民王』の、高橋一生というスパイス
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「こうしたミゾウユ(未曾有)の自然災害というものを乗り越えて……」
かつて、一国の総理大臣が次々と漢字を誤読して失笑を買ったことがある。2009年頃のことだ。池井戸潤は、この状況が不思議でならなかったという。そして、天啓を受けた。
「そうか、総理はきっと、どこかのバカ息子と脳波が入れ替わってしまったんだ――」(「本の話」WEB)
そんな発想で生まれたのが『民王』(テレビ朝日系)だった。
物語は、第100代内閣総理大臣の武藤泰山と、その息子である大学生の翔の人格が突然入れ替わってしまう。だが、国会は待ってくれない。翔に入れ替わった泰山は「お前が総理だ!」と、政治にまったく興味がない息子に言い放つ。「無理無理無理! 無理です! だってボク、スケジュールぎっしりだし、単位落としたらまた留年だし、お金かかっちゃいますよぉ! 明日(就活の)面接なんですよ!」と嫌がるが、泰山は冷静に言う。
「その顔でか?」
そう、翔は今、泰山のコワモテなのだ。結局、彼らは混乱を避けるため、原因を探りながら、泰山は就職活動、翔は国会に出席することに決めたのだ。そして現実同様、バカ息子である翔は「我が国はミゾウユウ(未曾有)の……」「危機にジカメン(直面)しており……」「ダツキャク(脱却)するために……」「しかるべきホチン(補填)をしながら」「ゼンドコロ(善処)するトコロアリ(所存)……」と、次々と読み間違いをしてしまう。
支持率は急落。だが、バカながらお人好しで優しい翔の言動で、徐々に人気を回復していく――という、とてもベタなストーリーである。だが、ドラマは原作者の池井戸が「今までいろいろな作品をドラマ化してもらったのですが、完パケが来るのがこんなに楽しみなドラマは初めてでした。原作をそのままドラマにして成功した作品は数あれど、原作から設定等を変えて成功する例というのはほとんどないし、難しいと思うんです。だけど今回のドラマ『民王』は、原作者の私が見ていても、何の違和感もないし、笑えて泣ける、コメディの王道のようないい作品になっていると思っております」(「ORICON STYLE」)と絶賛するほど、成功を収めている。
その魅力はなんといっても、個性的なキャラクターとそれを演じる俳優たちの魅力だ。
今回の脚本と演出は、そんな俳優たちのチャーミングさを引き出すことに特化している。主人公のひとり、泰山を演じているのは遠藤憲一。ヤクザ役などを多数演じてきたコワモテだ。ドラマでは「ワニ顔」と形容されている。また、さまざまな番組でナレーションも務める通り、渋い声も持ち味だ。だが、ドラマでは息子と入れ替わり、弱々しい声で、小動物のように怯える姿がチャーミングだ。
そして、泰山と入れ替わる翔を演じているのは菅田将暉。『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)で主演デビュー以来、NHK朝ドラ『ごちそうさん』、『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)、『死神くん』(テレビ朝日系)、映画『海月姫』など、多数の作品で好演してきた若手実力派俳優だ。ちなみにNHK土曜ドラマ『ちゃんぽん食べたか』でも遠藤と親子役を演じている。
菅田はこのドラマでは、か弱い“女子力男子”から一変、威厳のある勝ち気で男らしいキャラを演じている。さらに、草刈正雄演じる政敵・蔵本も入れ替わってしまう。しかも、入れ替わったのは、知英演じる娘・エリカ。2枚目キャラだった草刈が「サイテー!」「もうパパったら、大股で歩くのヤメてってばぁ!」などという女言葉に豹変する。
「入れ替わり」ものは、これまでも数多く作られてきた。それは、設定そのものがコメディになるという理由のほかにも、役者の振り幅を見せることができるという点が大きいだろう。だから、芸達者な役者が演じれば演じるほど、その振り幅でチャーミングさが引き立つ。『民王』は、このキャスティングの時点で成功したといえるだろう。
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