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色眼鏡を取り除く“反原発抗議行動”ドキュメンタリー『首相官邸の前で』

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 石崎は、自身もドキュメンタリー作品の撮影や編集を担当してきた、駆け出しの映像制作者である。小熊監督は社会学においては大家であっても、映像制作となると未知の分野。そんな人物との共同作業は大変だったのではないかと感じたのだが、「正直いって、普段の仕事とは勝手が違ったのは確かですね」とは話しつつも、石崎からは何ひとつ苦労話を聞くことはなかった。

「小熊さんの本を読んでいたこともあって、歴史社会学者の小熊さんが映画という限られた時間の中で、どのようにあそこで起きたことをまとめるのかに興味があった」と小熊監督との仕事を振り返った。

 昨年10月に出来上がった粗編は7時間あまり。当然、約1時間49分の作品として仕上げるのは容易な作業ではない。小熊監督とは頻繁に連絡を取り、構成や編集の試行錯誤を重ねた。その後、最終仕上げの段階では小熊監督の自宅で編集を行い、作業の合間には小熊監督の手料理も振る舞われたという。

 そんな話をしていると、大手メディアの取材を終えた小熊監督が姿を現した。挨拶の後、そこで筆者は「作業中の食事は出前とかお弁当ではなく、小熊監督の手料理だったのですか?」と話を切り出した。すると、小熊監督は丁寧な口調で、「何も特別なことではありませんよ。いつも自宅にいるときは、自分でつくっているので……」と、物静かに語ってくれた。

 その発言には、脱原発デモの演説で感じた敷居の高さは、みじんも感じられなかった。それどころか、石崎との共同作業が大した問題もなく進んだことへの感謝を述べつつ、作品についても謙虚な姿勢で説明をするばかり。

「政治的な映画というわけではなく、アート映画として観てもいいと思います」

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