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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『ど根性ガエル』第8話レビュー
構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

このドラマにとって“仲間”とは何を指すのか?『ど根性ガエル』第8話

dokonjogaeru0824.jpg『ど根性ガエル』(日本テレビ)

今クールのドラマの中から、注目の作品を1本ピックアップし、毎週追っていく新コーナー。

 『ど根性ガエル』の第8話は、ゴリライモ(新井浩文)が出馬した区議会議員選挙の投開票の一日に追った話だ。といっても、ゴリライモだけに焦点を当てているわけではない。すべての登場人物に対して敬意を持って描き、作り手の意図を前には出さず、しっかりとその人物を見つめる『ど根性ガエル』だけあって、ゴリライモに関わるすべての人物が有機的に絡み合う、愛おしい時間がそこにはあった。

 冒頭からゴリライモがひろし(松山ケンイチ)に、当選したらヒロインの京子ちゃん(前田敦子)にプロポーズすることを告げる。「お前にだけは、先に宣言しておこうと思ってな」というゴリライモのセリフが憎い。ひろしとピョン吉(声:満島ひかり)はゴリライモの応援のために集会で漫才を披露するのだが、いちいち京子ちゃんの表情を確認するひろしは嫌になるくらいに人間的で、ぐっと心をつかまれる。

 投票の際も、ゴリライモに1票を投じるのか悩むひろし。仲間であるゴリライモには当選してほしいが、京子ちゃんと結婚されるのも悔しいのだ。夜になって、みんなが集まる選挙事務所にも行かずに独り家でいじけているひろし。そこへ迎えに来るのは、やはり五郎(勝地涼)だ。五郎は「いじけてる先輩を連れて行くのは自分の役目」と言い、ひろしを選挙事務所へ連れて行く。

 そう、誰もが、誰かのために行動している。そう書いてしまうと少し恥ずかしく思えてしまうが、これまでの『ど根性ガエル』が描いてきた登場人物の個々のキャラクターが魅力的なだけに、その行動が一切偽善的に見えない。こいつだったらこうするだろう、と思えるようなこれまでの人物造形があるから、決して説教くさい話にならない。これは連続ドラマというフォーマットならではの、そして『ど根性ガエル』ならではの美しさだといえるだろう。

 そして選挙事務所についたひろしは、自身の提案により、ゴリライモにピョン吉のシャツを着させる。

「根性出るだろ? 弱気の虫はこいつが追っ払ってくれるからよ」

 実はゴリライモがピョン吉を着るのは、このときが人生で初めての経験だということも明かされる。小学生時代、こっそりうらやましいと思っていたゴリライモの回想もあり、ひろしがゴリライモのために、ゴリライモのことを思ってピョン吉を着させるという意味もより深くなる。

 結果、わずか1票差でゴリライモは当選。ひろしが自分の気持ちよりもゴリライモの当選を願った1票が、当選を決めた。誰かのために、という思いが結末を変える。この、誰かのために、という思いは「選挙」であり「政治」の本質そのものであって、ゴリライモを応援した誰もが喜んでいる。そしてゴリライモは、誰かのために、という思いを知っているからこそ、いい政治家になるだろうということも示唆される。

 今回、仲間というものを描いた『ど根性ガエル』はこのままハッピーエンドに向かおうとするのだが、ここで終わらないのがまた『ど根性ガエル』だ。そこへ着いていけていない人物が、実は一人いる。ヒロインの京子ちゃんだ。彼女は涙を流しながら、本心を吐露する。

「女とかじゃなくて、人として、もっとちゃんとして生きたいの。人として、仲間に入れてよ。お願い。お願いします」

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