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デモに何万人集まっても世の中が変わるワケない! 本気で革命をしたい人のための2冊

gendaibouryokuron06841.jpg『現代暴力論 「あばれる力」を取り戻す』(角川新書)

 さて、そんな既存の体制という幻想に対する怒りをもっとストレートに記したのが栗原康『現代暴力論 「あばれる力」を取り戻す』(角川新書)だ。

 まず、何がすごいかといえば、本郷あたりの社会科学系書籍が専門の出版社じゃなくて、KADOKAWAから出版されているのが信じられないくらい、強烈な主張が綴られているのである。著者の栗原氏は現在、東北芸術工科大学非常勤講師の職にあるという。とてもそれだけでは生活が成り立たないと思ったら、本人が「はたらかないで、たらふく食べたい」「年収は100万円にもみたない」と記しているから、正直すぎて信用できる。

 同時に、もしや栗原氏は虎ノ門事件で摂政宮(後の昭和天皇)を暗殺しようとした難波大助が狂人と思われないように第三高等学校を受験したエピソードにならって、何か世の中が仰天するようなたくらみのために、非常勤講師の職についているのではないかと思ってしまった。それほどまでに栗原氏は、ひらがなを多用した独特の文体で既存の社会運動に対する怒りと諦観を表現し、暴力を肯定する。

<「これでデモができなくなったらどうするんだ。おまえらのせいで再稼働をとめられなくなるんだぞ」。わたしたちは、なにかわるいことでもしているのだろうか。なんだかひどい負い目を感じさせられる。>

 そう、今渇望されているのは、こうした本音なのだ!

 新しい社会運動などと称するものの権力性を批判する言葉は新鮮だ。それ以上に栗原氏が研究している大杉栄の文章を引きながら語られる米騒動の解説などは、まるで見てきたかのように軽快に楽しく語られる。「暴力論の教科書」として紹介される『水滸伝』の解説など、相当楽しすぎたのか「竹中労の『黒旗水滸伝』ではない」なんて書いてある。

 いくら読者が限定されそうな本だからって、ここで何人が笑うんだ! 思わず、二重橋の前で陛下に一礼した後に「チェストー」とやりたくなるではないか!(意味がわからない人は『黒旗水滸伝』を読んでください)

 もちろん栗原氏も「べつにいまテロリズムをやろうよとか、そういうことがいいたいわけじゃない」とは書いている。でも、同時に物を壊したりも人を殴ったりも、警察にくってかかったりもしないデモを「おわっている、死んでる」と、ぶった切る。おそらくは、知識人やらに持ち上げられる、ピースフルな運動がやがて犯罪者か病人のひと暴れによって粉砕され、本当の祝祭としての暴動がやってくる未来を見ているのであろう。

 革命か維新か最終戦争か。そんなものが、いつやってくるかは、わからない。でも、この2冊の本の登場は、体制内の社会運動などに満足せず世の中を変えたいと願い、スタンバイする人々が増えていることを示しているだろう。

 夏も終わる。紅燃ゆる反逆の血潮が匂う秋がやってくる。俺たちの真の敵は「時代」だ。
(文=昼間たかし)

最終更新:2015/09/01 16:00
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