女優・大島優子はビンボーキャラがよく似合う! 20代後半を迎えた女の半端な生き辛さ『ロマンス』
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定刻どおりに発着する列車のように日常業務をきっちりこなすことに誇りを感じていた鉢子だが、おかしな男と出会ったことから日常のレールから大きく逸脱するはめになる。中年男がワゴンの中からせこくお菓子を万引きしているのを鉢子は目撃。マジメな性格の鉢子はいい加減な大人が許せない。箱根湯本駅の改札を出たところで逃げ出した男を捕まえるが、ロマンスカーは鉢子と万引き男を残して発車してしまう。その日、鉢子はイラついていた。ずっと音信不通だった母親から手紙が届いたが、自分勝手な内容でムシャクシャした鉢子は駅のゴミ箱に丸めて棄ててしまう。目を離していた隙に万引き男・桜庭(大倉孝二)がその手紙を拾い上げて「キミのお母さんは自殺しようとしているぞ」と騒ぎ始めた。自堕落な母親が自殺なんてするわけがないし、縁が切れてしまった母親がどうなろうと自分には関係ない。新宿に戻ろうとする鉢子に、桜庭はタコのように粘着質に絡み付き、「お母さんを探しに行こう」と言い出す。どうして初対面の男と母親を探さなくてはいけないのか。ワケが分からない鉢子だったが、なぜか体が幼い頃に家族旅行した箱根周辺の思い出の場所へと向かうのを抑えること
ができなかった。
特急列車のアテンダントを主人公にした『ロマンス』の原案は、人気脚本家の向井康介が考えたもの。それもあって、『ロマンス』は向井&山下敦弘監督のロードムービー『リアリズムの宿』(04)のタナダユキ版といった趣きがある。つげ義春原作の『リアリズムの宿』は駆け出しの脚本家(長塚圭史)と映画監督(山本浩司)と突然裸で現われた若い女(尾野真千子)との3人の男女のおかしな道中ものだったが、『ロマンス』では鉢子は自称「映画プロデューサー」の桜庭と箱根周辺を旅することになる。小田原城天守閣、スイッチバックで知られる箱根登山鉄道、自転車で回る芦ノ湖……。おなじみ箱根の観光スポットを、鉢子とおっさんプロデューサーは見つかるはずのない母親の姿を求めてさすらう。
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