“子どもだまし”では、子どもはだませない! Eテレ法廷教育ドラマ『昔話法廷』が裁くもの
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証人尋問では、殺されたオオカミの母や、こぶたの長男・トン一郎が出廷。木南晴夏演じる検察は、オオカミの母を尋問し、オオカミのカレンダーに「3時 豚肉パーティ トン三郎の家」と書いてあり、こぶたに招待されていたらしいことや、遺体を発見した家のテーブルに『オオカミのただしいころし方』という本があったという証言を引き出していく。
対して、加藤虎ノ介扮する弁護士は、「豚肉パーティ」と言ってこぶたが呼ぶのは「自分を食べて」と言っているようなもので、考えられない。また、部屋にあった本は『オリガミのたのしいおり方』だったと反論する。
最終弁論で検察は、直前に大鍋を購入している点や、食事時でもないのに大量のお湯を沸かしていた点、そしてオオカミを鍋から出られないようにフタを固定するために使った石はとても1匹で持ち上げられる重さではなく、3匹で協力した上の計画的犯行であることは明らかと結論付ける。一方、弁護側は、裁判員に心情で訴えかける。
「身の危険を犯してまで、オオカミをおびき寄せるでしょうか?」と。
番組では、最終的な判決までは描かない。もちろんそれは、この番組が「教材」であるという理由が大きい。当然、裁判員制度や裁判がどういったものかを子どもたちに教える教材用の映像として、学校等で使われることを想定して作ったものであろう。
また、同時に道徳的な教材にもなっている。「正義」と言われているものは、本当に「正義」なのか。「常識」や「前提」としてきたものは、本当に疑いなく正しいのか。『昔話法廷』は、誰もが知る「昔話」を題材にし、それを別の側面で見ることで、子どもたちに物事を多角的に見る力を養わせる。
何より、『昔話法廷』が「教材」として優れているのは、この番組が「面白い」ということだ。子どもだましでは、子どもはだませない。本格的法廷ドラマとして大人も楽しめように作りこまれているからこそ、子どもたちも前のめりになり、「教材」となり得るのだ。
今回放送された3篇は、8月21日(午後11時25分~11時55分)と28日(午後11時30分~11時45分)に再放送が予定されているので、未見の方はぜひ見てほしいし、続編もまだまだ見たい。
「桃太郎」「かぐや姫」「浦島太郎」「こぶとりじいさん」……。裁くべき正義や常識は、まだまだある。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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