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日刊サイゾー トップ > 海外  > 中国“死神”老人ホームは出て行け?

「死神は出て行け!」超高齢化社会を突き進む中国で、老人ホーム建設反対運動が勃発

home081404wbマンション入り口には、不動産価格の推移を掲示。住民たちは、不動産価値が下がることを恐れている

 
 2つ目は、このマンションの不動産としての価値の低下だ。マンション入り口には、ご丁寧に不動産価格の推移を示すグラフが掲示されている。それによると、上海市や楊浦区の平均を下回っているといい、老人ホームの建設計画がその理由だと主張しているのだ。

 現場に足を運ぶと、たまたまテレビ局が取材に訪れており、住民が集まっていた。見ると、50~60代が多い。50代半ばの男性は「とにかくマンションから近すぎる。老人ホームとなる建物のすぐに下には、子どもの遊具だってあるんだ」と憤っていた。

home081405wb現場にはテレビ局の取材クルーが訪れていた。集まっているのは、高齢者予備軍

 彼らには、自分たち自身も将来、老人ホームのお世話になる可能性があるという想像力が働かないのだろう。中国で50代より上は、特にきょうだいの多い世代。親の面倒を見るのに、負担を分散することができた。ところが、自分たちの子どもは一人っ子。一人の子どもが2人の親の面倒を見るのは負担が大きく、老人ホームを選択する家庭は今後間違いなく増えるはずなのだが。

 中国では長年の一人っ子政策により、人口構造がいびつになっている。高齢化が急速に進んでいるが、とりわけ上海はスピードが速い。上海市統計局の発表によると、14年時点で65歳以上は270万人を超え、全人口の18.8%を占める(上海戸籍保有者に限る)。この人口構造のひずみが、老人ホームの需要を拡大させている。しかし、今回の反対運動が長期化するようであれば、ほかのプロジェクトにも波及するだろう。中国の高齢化対策は、人々の価値観や道徳心の変化により、難しい局面を迎えようとしている。
(取材・文=大橋史彦)

最終更新:2016/01/27 13:12
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