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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 二階堂ふみ『この国の空』評
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.335

空襲で焼け死ぬ前に一度セックスしてみたい……二階堂ふみが演じる戦時下の青春『この国の空』

konokuninosora03wb里子は市毛と闇米の買い出しに出掛ける。先行きの見えない戦争と夏の暑さが、2人の間にある年齢差と倫理観をドロドロに溶かしてしまう。

「今すぐ食べて」という里子の気迫に押された市毛は、うなずきながらトマトにむしゃぶりつく。市毛の手に握られたトマトは汁を垂らしながら、市毛の口の中へと吸い込まれていく。もう里子も市毛も我慢できない。里子のシャツのボタンは慌ただしく外され、ふんどし一丁になった市毛に押し倒される。里子の頭の中は真っ白になっていく。

『この国の空』は反戦映画ながら、とてもエロチックな作品だ。里子は戦争に負けた日本がこれからどうなっていくのかという社会情勢よりも、年上の市毛には妻子があるという倫理観よりも、処女のまま死んでしまうのは嫌だという自分の衝動に正直に生きる。戦争は嫌。竹槍で戦うよりも、愛する男の肌に触れていたい。わずかな時間でいいから、結婚生活を味わってみたい。二階堂ふみが演じる里子の一途な願望を、誰も否定することはできない。
(文=長野辰次)

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『この国の空』
原作/高井有一 脚本・監督/荒井晴彦 出演/二階堂ふみ、長谷川博己、富田靖子、利重剛、上田耕一、石橋蓮司、奥田瑛二、工藤夕貴 配給/ファントム・フィルム 8月8日よりテアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋ほか全国公開中 (c)2015「この国の空」製作委員会
http://kuni-sora.com

最終更新:2015/08/18 11:19
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