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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 二階堂ふみ『この国の空』評
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.335

空襲で焼け死ぬ前に一度セックスしてみたい……二階堂ふみが演じる戦時下の青春『この国の空』

konokuninosora02wb6歳上の親戚の女の子は戦時下でも嫁入りしたのに、もうすぐ20歳になる里子には縁談話がひとつもない。里子の頭の中は市毛のことでいっぱいになる。

 ゴーストタウン化してしまった東京を、里子は久しぶりに離れることに。母と一緒に郊外の農家まで闇米の買い出しに出掛ける。夏の陽射しの中をずいぶん歩いて汗を掻いた里子は裸足になり、清流の中でしばし涼む。開放感のあるこのシーンを観て多くの男性は思うだろう。「あぁ、川を流れる水になって、二階堂ふみの足の指のすき間を流れたい」と。またある日、里子は市毛の留守中、片付けを口実に市毛の寝室にまで足を踏み入れる。そして、おもむろに市毛が使っている枕カバーの匂いを嗅ぐ。やはり、多くの男性は思うだろう。「あぁ、二階堂ふみに匂いを嗅がれる枕カバーになりたい」と。そんな不埒な妄想をしてしまうほど、里子と実年齢が重なる二階堂ふみの美しさが匂い立っている。

 1983年に発表された原作小説『この国の空』を映画化したのはベテランシナリオライターの荒井晴彦。二階堂ふみのキャスティングよりも先に、脚本だけでなく監督も兼任することを決めていたそうだが、『私の男』(14)でも10代と思えぬ妖艶さを見せた二階堂ふみを演出することが『身も心も』(97)以来となる監督業の大きなモチベーションになったのは間違いない。脚本家・荒井晴彦の初期代表作に『遠雷』(81)がある。ハウストマトを育てる農家に嫁入りすることになったデビュー間もない頃の石田えりの熟れたてのトマトのような、たわわなおっぱいが目に染みる作品だった。本作でもトマトが重要なツールとして使われている。夜更け、悶々として寝付けずにいた里子は庭で実ったばかりのトマトをもいで、市毛宅を訪ねる。真っ赤なトマトを市毛に差し出して、「今すぐ食べて」と迫る。

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