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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 『日本のいちばん長い日』今週公開
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.334

日本はドイツのような分断国家になる寸前だった!? 敗戦処理内閣の苦悩『日本のいちばん長い日』

nihonnnoichibannnagaihi_03w皇居内の地下壕で昭和天皇が立ち会う御前会議が開かれる。無条件降伏を受け入れるかどうかで、重苦しい時間が流れていく。

 8月14日夜、皇居内で玉音放送の収録が行なわれる一方、陸軍では不穏な動きが起きていた。本土決戦を前に日本が全面降伏することを知った畑中健二少佐(松坂桃李)ら若い将校たちが近衛第一師団長を殺害し、師団長命令を偽造、皇居内を占拠するクーデターが発生する。宮城事件と呼ばれるものだ。玉音放送を収録したレコード・玉音盤は、あやうくクーデター軍の手に落ちるところだった。畑中少佐らは阿南陸相を神輿に担ぎ上げ、全国民に徹底抗戦を訴え掛けるつもりだった。だが、肝心の阿南陸相は敗戦の責任をひとりで負い、玉音放送が流れる前に陸相官舎にて割腹自殺を遂げることになる。

 一見、難解で重苦しい歴史ドラマと思われがちな『日本でいちばん長い日』だが、とても明快でシンプルなメッセージで貫かれている。それは戦争を始めることは暗愚な政治家でも容易にできるが、血が流れてしまった戦争を終結させるのは生半可な覚悟ではできないということだ。日本史の教科書ではわずか数行で済まされる鈴木貫太郎内閣だが、鈴木貫太郎は2.26事件で4発の銃弾を頭や胸に浴びながらも奇跡的に生き延びた強運の持ち主だった。日本を終戦に導くことを自分に託された使命とし、それを完遂した。野心や打算では動かない男たちが70年前のこの国にいたことを想う。
(文=長野辰次)

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『日本のいちばん長い日』
原作/半藤一利 監督・脚本/原田眞人 出演/役所広司、本木雅弘、松坂桃李、堤真一、山崎努、戸田恵梨香、松山ケンイチ 配給/アスミック・エース、松竹 8月8日(土)より全国ロードショー (c)2015「日本のいちばん長い日」製作委員会
http://nihon-ichi.jp

最終更新:2015/08/06 17:00
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