肉親と精神科医から食い物にされた天才の悲劇!! ビーチ・ボーイズ暗黒神話『ラブ&マーシー』
#映画 #パンドラ映画館
精神科医ユージンは賛否両論のある人物だ。彼がいなければブライアンはデニスのように早く亡くなっていただろうという擁護派と、ブライアンから莫大な治療費を巻き上げた上に、ブライアンの自伝やソロアルバムの利権という甘い汁まで吸った極悪人だとする断罪派に分かれている。映画『ラブ&マーシー』ではユージン医師(ポール・ジアマッティ)はブライアンを統合失調症と診断し、酒とドラッグとジャンクフードを取り上げる代わりに薬漬けにしてしまう。精神病患者が精神科医と呼ばれる人にいかに従順に依存してしまうかがまざまざと描かれ、サイコホラーのようなおぞましさを覚える。だが、名優ポール・ジアマッティ演じるユージン医師も多くの精神病患者の心の闇を覗き続けるうちに、彼自身が闇に侵蝕されてしまったかのような哀れさがある。ユージン医師はブライアンをマインドコントロールすることには成功するが、ブライアンの心の闇までは晴らすことはできない。
発表から半世紀が経った今も、『ペット・サウンズ』の輝きはまったく変わらない。それは漆黒の闇夜に存在する新月のような孤高さに溢れている。ブライアン・ウィルソンの孤独さが生み出した名曲の数々は、現代人の心にこれからもきっと寄り添い続けるだろう。
(文=長野辰次)
『ラブ&マーシー』
製作・監督/ビル・ポーラッド 出演/ジョン・キューザック、ポール・ダノ、エリザベス・バンクス、ポール・ジアマッティ
配給/KADOKAWA PG12 8月1日(土)より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
(c)2015 Malibu Road,LLC. ALL rights reserved.
http://loveandmercy-movie.jp
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