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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.332

食料が尽きたはずの戦場で食べた奇妙な肉とは? 嘔吐感に見舞われる戦慄のグルメ映画『野火』

nobi03.jpg昼間は射るような陽射し、夜間は米軍の砲撃が容赦なく日本兵を襲う。戦闘シーンでは、自主映画と思えないような人体破壊描写あり。

 市川崑監督が撮ったモノクロ映画『野火』(59)では、主人公の田村(船越英二)は歯が悪く、干し肉を食べられないまま物語は終わる。終戦から14年しか経っていなかった当時は、カニバリズムを映画の中で直接的に描くのはあまりに生々しすぎたのだろう。だが、塚本監督が撮った極彩色の『野火』の主人公たちはしっかりと“猿の肉”を喰らう。あの世の食べ物を口にした人間は、もう現世には戻れないといわれる。戦争が終わっても、田村は以前の生活に戻ることはできない。田村の心の中ではいつまでもフィリピンで見た野火が炊かれ、黒い一条の煙が流れ続けている。
(文=長野辰次)

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『野火』
原作/大岡昇平 監督・脚本・編集・撮影・製作/塚本晋也 出演/塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作 配給/海獣シアター PG12 7月25日(土)より渋谷ユーロスペース、立川シネマシティほか全国順次公開
(c)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
http://nobi-movie.com

最終更新:2015/07/24 17:00
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