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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム > 週刊誌スクープ大賞  > グーグルに残った過去は消せる?
週刊誌スクープ大賞

“過去”が表示されるのは人格権の侵害!? グーグルに「検索結果の削除」要請が急増中!

 今週の第1位は、ポストのグーグルについての記事。

 6月25日にさいたま地方裁判所が出した判決は、司法関係者の間に衝撃を与えているとポストが報じている。

 大手検索サイト「グーグル」の検索結果で過去の逮捕報道が今も表示されるのは「人格権の侵害」だと、昨年A氏(男性)がグーグル米国本社に削除を求めた仮処分申し立てに対して、さいたま地方裁判所は削除を命じたのだ。

 A氏は11年に、当時16歳だった少女に金銭を支払いわいせつな行為をしたとして逮捕され、児童買春禁止法違反で罰金50万円の略式命令を受けた。それから3年以上経過してからも検索で自分の名前を入力すると、当時の逮捕報道が表示されるのは「更生を妨げられない権利(人格権)の侵害に当たる」と主張した。

 グーグル側は「未成年に対して行われた悪質な犯罪で、逮捕歴は子を持つ親など社会一般の関心も高い」と反論したそうである。

 司法関係者がこう解説している。

「事件に歴史的、社会的な意義がなく、A氏が公人ではないことなどが判決の理由だが、逮捕報道を検索結果から削除させたことは他の関連訴訟にも影響するだろう」

 同様の訴訟提起は近年急増していて、ITに強い弁護士のところには依頼が殺到しているそうだ。

 サイト管理者などが削除請求に応じなければ、裁判所に「削除仮処分」の申し立てを行うことになるが、書き込みがコピーされ、拡散していればすべての管理者に削除請求しなければならない。

「すべてのサイトに申し立てを行うのは現実的に困難です。だから、それらの“入り口”となる大手検索サイトに『検索結果の削除』を申し立てる方法が注目されています。検索サイトの最大手といえばグーグルとヤフーですが、ヤフーはグーグルの検索エンジンを使っているので、申し立て先はグーグルに絞られる」(神田知宏弁護士)

 この問題は、これからますます深刻になってくるだろう。週刊誌には新潮が始めた「あの人は今」という名ワイド特集があった。だが、よほどの大義名分がない限り、その人の「犯歴」を開示してはいけないという考えが広まり、今ではそうした企画はできなくなってしまった。

 だが、ネット上にはその手の情報が氾濫し、掲載されたらその人間が死んでも残ってしまう。

 03年に早稲田や東大の学生ら14人が準強姦罪で起訴された学生サークル「スーパーフリー(通称スーフリ)」による集団強姦事件が起きた。かつてそのサークルに入会していた男性が、事件とは無関係だったにもかかわらずグーグル検索でいまだに「事件に関与した元スーフリ幹部」と表示され名誉を傷つけられていると主張し、米グーグル本社に対して検索結果の削除と慰謝料を求めて12年に東京地裁に提訴した。

 一審では男性側の主張が認められ、慰謝料30万円の支払いとともに検索結果の表示を禁じる判決が出たが、東京高裁判決では逆転敗訴した。

「男性側は上告し、年内にも最高裁判決が出る予定です。判決とともに注目されているのは、男性が高裁判決前に、グーグル側が削除請求に従わなければ『一日につき100万円の制裁金』を支払うよう仮処分申請を出し、裁判所が認めていることです。仮に最高裁でグーグルが負ければ提訴から約700日分、約7億円もの制裁金を男性は手にする可能性がある」(司法関係者)

 神田弁護士がこう言う。

「個人の人格権を侵害するような過去をネット上から削除できる『忘れられる権利』は、罪を犯した人にもあると考えられています。ただし問題は権利を行使する人物が過去と決別し、本当に更生しているかどうか。この点が曖昧だと社会の理解は得られないままでしょう」

 これはネット社会の今、最大の問題だと思う。どう解決するのか、できるのか、真剣な論議が必要である。
(文=元木昌彦)

最終更新:2015/07/23 13:42
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