『Mr.タスク』で元天才子役がセイウチ人間と対決? 性格俳優としての大いなる変身ぶり、どーですか!
#映画 #インタビュー
──スクリーンから一時的に離れていた頃には、飲酒運転騒ぎもありましたね。でも、その後に入学したニューヨーク大学では充実した時間を過ごしたとのこと。
オスメント 僕はそれまでずっとLAで暮らしていたんだけど、大学進学をきっかけにNYでひとり暮らしを始め、僕にとってそれはとても刺激的な体験だったんだ。NYではいろんなタイプの映画が上映されているし、ブロードウェイでもたくさんの舞台が上演されている。芝居をやっている人間にとっては、最高の環境だったよ。それと僕は子役時代ずっと大人たちと一緒に仕事をしてたわけだけど、大学に入って初めて同年代の仲間たちに出会えたんだ。大学には米国人だけじゃなくて、いろんな国からいろんな学生たちが演技を学ぶために集まっていたんだ。様々なスタイルの演技に触れることができたよ。授業で実験演劇なんてのもやったりしたんだ。同級生の中には、大学卒業後にシルクドソレイユに入ったヤツもいる。舞台、テレビ、映画……みんな、それぞれ違う分野に進んで、頑張っているみたいだね。
──在学中に自主映画を制作したりはしなかった?
オスメント ニューヨーク大学では僕が専攻したのは演劇だったこともあって、在学中はずっと芝居ばかりやっていたんだ。自主映画じゃないけど、自分で台本を書いて、自分で演出した舞台を上演したりしたよ。えっ、どんな内容かだって? すっごいシュールな話で、おかしなキャラクターたちが登場する舞台だよ(笑)。実は今も脚本を書いていて、在学時代に作ったキャラクターを使えないかと思っているところなんだ。できれば、この脚本は自分の手で映画にしたいなと考えているよ。
■子どもの頃に考えていた以上に、現実世界はヒドいものだよ(笑)
──『Mr.タスク』に話題を戻しましょうか。本作の主人公ウォレス(ジャスティン・ロング)は他人の不幸をポッドキャストのネタにして笑っている。そんな彼が「セイウチのかっこうで暮らしてくれる同居人募集」という奇妙な貼り紙を見つけたことから事件に巻き込まれ、それまでの自分の人生を見つけ直すことに。単なるコメディでもなく、かといって純然たるホラーでもない。かなり変わった作品ですよね。
オスメント 僕もそう思うな。自分を見つめ直すという行為は、常に心掛けておきたいことだよね(笑)。ケヴィン監督の作品は今回だけに限らず、いつも複雑で奥深いんだ。コメディタッチではあるけど、現代人にある種のモラル的なものを問い掛けている作品が多いんじゃないかな。今の時代ってインターネット上でネガティブな発言をすれば、有名になりやすい風潮があるよね。でも、それってどうなんだろう。ネット文化に対するケヴィン監督なりの考えを、ケヴィン監督流に映画化したものじゃないかな。僕はインターネットに関わらないようにしていた時期があったけど、最近になってツイッターを始めたんだ。でも、なるべくネット上ではポジティブなものを発信するように努めているよ。
──当サイトの編集者に聞かせてやりたい言葉だなぁ。あっ、今のはひとり言です(笑)。『Mr.タスク』を観て感じたことですが、男っていくつになっても子どもっぽさを引きずりがちですよね。でも、この作品は“少年性の喪失”がひとつのテーマじゃないかと個人的に解釈しています。ジャスティン・ロング演じる主人公ウォレスは、以前はクマのプーさんを読んで涙を浮かべるような繊細な若者だったのに、ポッドキャストという新しいメディアで有名になるに従って、ナイーブさを棄てて、人気とお金を手に入れていく。
オスメント 確かにそうかもしれない。大人へと成熟していくことの葛藤が『Mr.タスク』のテーマなのかもしれないね。ウォレスは繊細な心を棄てて、よりタフでクールな大人になろうとする。でも、同時にそれまで付き合ってきたガールフレンドのアリー(ジェネシス・ロドリゲス)に対してひどい扱いをするようになる。そんなときに、僕が演じる親友のテディが彼女を寝盗ってしまう。これって、イノセントさの消失そのものだよね。ウォレスの留守中にテディとアリーは付き合い始めるわけだけど、ウォレス拉致監禁事件が起きてしまう。テディとアリーは罪悪感から、ウォレスを探すことに……。ここまで複雑な内面を抱えたキャラクターは、子役時代には経験したことがなかったよ(笑)。
──最近の日本では「ずっと子どもでいたほうが楽」と、実家で暮らし続け、親離れしない若者が増えています。大人になるということを、元名子役はどのように受け止めています?
オスメント 日本で実家暮らしを続ける若者が多いってニュースは、僕も耳にしたことがあるよ。米国も似たような傾向なんだ。やっぱり経済状態がよくないと、実家を出て独立するのは難しいよね。それに、大人になるといろんなことに自分自身で向き合わなくちゃいけないし、責任も生じるようになる。独立するのは決心がいることだと思うよ。僕の場合はやっぱり実家を出て、大学に通うためにひとり暮らしを始めたことが、とても大きな転機だった。親とはすごく仲がよかったけど、ひとり暮らしにはずっと憧れていたし、NYでの生活はとてもいい刺激を僕に与えてくれた。『Mr.タスク』の場合はウォレスは経済的には自立しているけれど、やっていることは思春期の男の子がやっている悪戯ごっこの延長みたいなもの。今の時代はインターネットが普及しているので、自分の趣味の世界を広げて、その世界の中で暮らそうと思えば暮らせるわけだよね。子どもっぽいことを大人になっても続けることの善し悪しを、ケヴィン監督は映画の中で回答はしてはいないけど、いろいろと考えさせる作品になっていると思うよ。
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