上坂すみれ、小島慶子、黒柳徹子…安保法制論議の中で彼女達が語った「平和」のための提案とは
この本には、あの黒柳徹子も登場する。黒柳はまず、第二次世界大戦中の自身の体験を語りだす。
空襲が頻繁にあった東京では、一日の食料が大豆15粒。しかも、米軍機が飛来するたびに防空壕で怯える毎日が続いていた。そんな日々に耐えかね泣きながら街を歩いていると、それを見かけたおまわりさんに「どうして泣いているのか」と聞かれたという。
当時、8歳の彼女は、戦争に対して不安な気持ちをありのまま伝えた。すると、慰められるどころか、「戦地に行っている兵隊さんはもっとつらい。兵隊さんのことを思ったら、つらいなんて言えないはずだ、泣くな!」と怒られる。まだ何も知らない子どもですら、自分の気持ちを言うことが許されない。そのことに黒柳は「ひどく絶望した」という。
その経験をふまえて、黒柳は、いま我が国が突き進もうとしている“言論統制”の雰囲気に警鐘を鳴らすのだ。
〈自分の考えを自由に口に出せないというのは、不自由で窮屈で、そこに希望など全くありません。決められた考えや思想を押しつけられ、それ以外は許されないという世の中に、平和への道筋などないでしょう〉
〈「戦争反対!」と堂々と叫べる今が、どれだけ幸せで平和であるかを、ぜひ改めて考えてみてください。そして、この平和が少しでも長く続くよう、誰もが自分の考えや意見を声に出していったらよいと思うのです。
それは、決して言い争うためではなく、お互いの考えていることを知り、理解し合い、協力し合っていくきっかけをつくるためです〉
〈もっと広く周りを見てみましょう。刻々と日本も世界も変わっていきます。もし、悪い方へと変わりはじめたときに、ぼんやりしていたら、声をあげるタイミングを逃してしまい、今、あなたの目の前にあるものがすべてなくなってしまうかもしれません〉
こうして見ると、彼女たちが主張していることには、一つの共通点がある。それは、相手を“知ること”“見ること”“対話すること”“お互いに理解すること”、これらの大事さだ。
まるで、道徳の教科書のようだが、宗教・人種・石油などのエネルギー利権・領土など、様々な問題を乗り越えて、なお平和を得るためには、根気強い「対話」しかないのである。
そういえば、安倍政権は、道徳の授業に力を入れるよう教育政策を進めていたはずだが、まずは、自分たちが「人の話はちゃんと聞きましょう」という補習授業を行なう必要がありそうだ。
(井川健二)
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