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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 一晩だけ殺人OK映画『パージ』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.330

米国はこうして失業率、犯罪発生率を激減させた! 法律が認めた人間が持つ凶暴性の解放『パージ』

purge_02.jpg自宅は当然ながらジェームズが売っているセキュリティーシステム仕様となっているが、肝心のジェームズは「完璧なシステムではない」とトホホな発言。

 超低予算ホラー『パラノーマル・アクティビティ』シリーズのジェイソン・ブラムと“破壊衝動の権化”マイケル・ベイが製作者として名前を連ねる『パージ』は、裕福なサラリーマンの一軒家が舞台となるシチュエーションものだ。ジェームズ(イーサン・ホーク)はセキュリティーシステムの販売会社に勤めている。パージ法が施行されたお陰で、セキュリティーシステムはバカ売れ。ジェームズ一家が暮らす高級住宅街でも、ご近所さんはみんな購入してくれた。ジェームズは営業成績を上げ、家を増築することもできてウハウハ。まさにパージ法さまさま。パージ法は社会経済の活性化にも役立っているのだ。今年もパージ・デイがやってきた。ジェームズは妻メアリー(レナ・ヘディ)、高校生の長女ゾーイ(アデレイド・ケイン)、引きこもりぎみの息子チャーリー(マックス・バークホルダー)との夕食を終え、全自動のセキュリティーシステムを稼働させる。善良な市民であるジェームズ一家は誰からも恨みを買うような心配はなかったが、どんな不審者が現われるか分からない。すべての窓にシャッターが降り、ドアは完全にロック。ジェームズ宅は要塞と化した。

 夜7時から翌朝7時まで家の中で静かに過ごせば、パージとは無関係で終わるはずだった。街ではパージ賛同者たちによるマンハンティングが始まった。この日は何人殺しても罪には問われない。隠れ場所のないホームレスたちが真っ先に標的となる。モニター越しに街の様子を眺める息子チャーリーの目線を通じて、パージの実態が徐々に明かされる。パージ法は人間の心や社会を浄化するというが、実際はホームレスや失業者といった最下流層を一掃するための法律だった。ホームレスや失業者が減れば、国は彼らに生活保護費や失業手当などを支払わなくて済み、国家予算は潤う。しかも、毎日汗水流して働く勤労者たちにとって、ホームレス狩りはいいガス抜きにもなる。権力者たちにとっては一石二鳥の効果があった。

 ホームレス狩りを目の当たりにしたチャーリーは、耐え切れずに自宅の全自動セキュリティーを解除してしまう。ジェームズは息子の行動に激怒するが、後の祭りだった。電源がオフになり真っ暗闇になったジェームズ宅に、ホームレスが駆け込む。やがて、パージ法に賛同する過激な武装集団が続々と玄関前に押し寄せ、「ホームレスを引き渡せ。さもなくば、こちらから押し入るぞ」と最後通牒を告げる。朝7時まで、まだまだたっぷりと時間があった。ジェームズは一家の主として決断を迫られる。

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