サハリンで朝鮮人強制労働の証拠発見か!? 世界遺産登録で歴史問題にあらたな火種
軍艦島をはじめとする「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録をめぐり、日韓関係の混迷がさらに深まりつつある。そんな中、韓国では「サハリンで、日本人に強制労働させられた朝鮮人の資料が発掘された」というニュースが、大きな話題となっている。同ニュースは、世界遺産登録が決定する2日前の7月3日に、中央日報、東亜日報など、大手メディアによって一斉に報じられた。現在、韓国では日本政府が「強制連行」を認めたという解釈が一般になり、そのため、あらためて注目を浴び始めた形だ。
戦前のサハリンで、日本政府や企業による朝鮮人の強制労働があったという資料は、韓国の「対日抗争期・強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者等支援委員会」によって発表された。同委員会は、韓国・国務総理(首相)室所属の委員会である。
同委員会は、昨年にロシアの国立サハリン州歴史記録保存所などから、朝鮮人の名簿や関連記録物を入手。強制性が明確だと考えられる846人を、同委員会の「強制動員名簿」に記載したとしている。収集された資料の中には、1941〜44年までの間に、豊原警察署が作成したものも含まれるとされる。
同委員会の調査に立ち会った、韓国外国語大学中央アジア研究所のパク・イルグォン教授は、豊平警察署とその資料について、次のように指摘している。
「もともと豊平は、日帝時代に南サハリンの植民地を担当していた樺太庁があった場所。現在のユジノサハリンスク地域に当たります。そこで書かれた警察文書なので、植民地時代の日本の治安行政担当部署の内部資料といえます」
豊平警察署の資料には、“朝鮮人関連”という資料が多く残されているという。内容としては、一般手配者や、要注意人物の監視、所在不明者に関する手配、捜査資料などがある。これらの資料は、日本人の立場からすると、治安関連の資料ということになる。
「ただ、この資料を他の資料と併せて読むと、他の文脈が出てくる。そのひとつに、朝鮮人労働者の逃走に対する手配と関連した文献があるでしょう。ここには、サハリンだけではなく、北海道、九州などの地名が出てきます。それらの労働現場で、多くの朝鮮人労働者が現場から脱出を試みているのです。その数は、1941年だけでも1,400人。当時、彼らが逃げるのを、日本側が治安対象として取り締まっていたということになる。強制的に働かせていないのであれば、なぜそもそもそのような過酷な場所に、朝鮮人労働者が集団で移動することができたのか。また、自分の意志で辞めたとして、治安対象となり追われなければならなかったのか。そういう事実からは、当時の朝鮮人労働者たちが、意思とは無関係に抑圧的な状況にいたということが見えてくるでしょう」(パク教授)
世界遺産登録を皮切りに、あらためて歴史問題の論争に火がつこうとしている日韓関係。果たして、同資料が新しい火種となるのだろうか?
(取材・文=河鐘基)
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