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週刊!タレント解体新書 第29回

ミスターSASUKE・山田勝己はバカであることを恐れない TBS『SASUKE2015』(7月1日放送)を徹底検証!

 以上が、今回の『SASUKE』における山田勝己のすべてのコメントである。どうだろうか? 文字にしてみるとあらためてわかるが、具体的なアドバイスは、ほぼ何もしていない。「行け」「上がれ」「登れ」「泳げ」などは、そもそもそうしなければいけない場面なのだから、山田勝己に言われなくたってそうするだろう。山田勝己はほとんど何も言っていない。ただ夢中で、ただがむしゃらに、『SASUKE』に対する思いを、その熱量だけを叫んでいる。

 だが、まさにそれこそが、山田勝己が人の心をつかむ理由なのだ。確かに、ツッコミどころは数多くある。何を言っているんだと笑うこともできるだろう。バカなんじゃないか、と。しかし、だからこそ、それゆえに、人は山田勝己に心をつかまれる。ゲストのNON STYLE井上裕介は「俺も黒虎に入りてえよ!」と叫んだ。山田勝己は、言葉は悪いが、確かにバカなのかもしれない。しかし、もっと大事なことがある。山田勝己は、バカであること、あるいはバカだと他人から思われることを、一切恐れていないのだ。

 今回、山田軍団・黒虎として唯一1stステージをクリアした山本浩茂は、こう言った。「(山田軍団のことで)いろいろバカにされてますけど、山田さんあっての僕らなので」と。やっぱり、バカにされているのだった。そりゃあ、そうかもしれない。完全制覇したからといって、大金が手に入るわけではない。わかりやすい地位や名誉は、そこにはない。そんなことのために、日々、鍛えている。バカなんじゃないか。だけど、こうも言えるだろう。バカだって、いいじゃないか、と。

 数字や結果が求められる世の中で、バカになれることが、一つぐらいあったっていい。本当は誰だって、そう思っているんじゃないか。そして山田勝己は、実際にそうやって生きている。だから人は、心のどこかで山田勝己に憧れる。バカであることを恐れないという生き方を、自ら選んだその人に。

 そしてそれは、決して他人事なんかじゃない。人は誰だって、山田勝己になることが許されている。ツッコんだり、ツッコまれたりが蔓延する昨今だ。山田勝己という生き方は、そんな今だからこそ、必要とされているのではないだろうか?

【検証結果】
 山田勝己がそうであるように、そもそも『SASUKE』自体が、バカであることを恐れない番組である。今回、4年ぶりの完全制覇を成し遂げた出場者の密着VTRが多く放送されていたが、これはたまたま彼が完全制覇を成し遂げたからであって、ほかの出演者に対しても程度の差はあれそういった映像素材は存在しているのだろう。その無駄を『SASUKE』は恐れない。そしてこの番組は、時間の都合でカットされたり、放送時間が短かった挑戦者に対して、わざわざその人のためだけに映像を編集してDVDを渡しているという。非合理で、非生産的で、言ってしまえば、バカである。だから『SASUKE』は素晴らしい。バカであることを恐れないと決めた者は、誰よりも強いのだった。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa

最終更新:2015/07/04 12:00
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