江戸川乱歩の人気小説『パノラマ島奇談』の実写版『天国と地獄の美女』の肉欲の宴が忘れられない!!
今年7月に没後50年を迎える作家・江戸川乱歩。猟奇趣味、倒錯愛に満ちた乱歩の世界は、一度その世界に触れてしまった人たちの心を捉えて離さない。乱歩の世界を語る際に多くの人々が思い浮かべるのは、子どもの頃に読み親しんだ「少年探偵団」と「土曜ワイド劇場」(テレビ朝日系)で1977年から94年にわたってオンエアされた“江戸川乱歩の美女シリーズ”ではないだろうか。今年は乱歩の没後50年に加え、同シリーズの初代・明智小五郎を演じた天知茂の没後30年にあたることから、天知茂が主演した全25作品を収録したブルーレイボックスがキングレコードから発売される。
大人の色香を漂わせた人気女優たちの入浴&ベッドシーンと数々の猟奇殺人シーンで視聴者の目をクギづけにした“江戸川乱歩の美女シリーズ”は、平均視聴率18%という人気ドラマだった。犯罪者たちが仕掛けるトリックや明智小五郎の変装のチープさに放送当時は思わず吹き出してしまったが、いま見直してみるとそんなキッチュさも愛おしい。中でもシリーズ第17作として1982年1月2日にオンエアされた『天国と地獄の美女』は、最も妖しい魅力に満ちた作品として強く推したい。天知茂、荒井注、五十嵐めぐみのレギュラー陣に加え、叶和貴子、伊東四朗、小池朝雄、宮下順子、水野久美ら豪華キャストが出演した二部構成の本作は、江戸川乱歩の初期の中編小説『パノラマ島奇談』を原作にしている。
『パノラマ島奇談』は売れない作家・人見広介が自分にそっくりな財閥一家の主・菰田源三郎の土葬された死体と入れ替わって蘇生、そして菰田家の財産と美人妻を手に入れるという乱歩ならではの荒唐無稽な物語だ。しかし、『パノラマ島奇談』の面白さはミステリーとしての謎解きではない。大正15年(1926)に執筆が始まったこの小説にキラキラとした宝石のような不滅の輝きを与えているのは、主人公・人見広介が取り憑かれたユートピア願望なのだ。自分のイメージする“美の楽園”を地上に造り上げることを夢想する広介は、菰田家の全財産を湯水のように使いまくり、孤島を丸ごと人工のユートピアへと改造してしまう。自分の中に渦巻く妄想を実体化してしまう、ひとりの男の狂った情念に圧倒される。
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