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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 主役級女優の四姉妹 『海街diary』

主役級女優が演じる四姉妹! 美しい家族愛を描いた、是枝監督の最新作『海街diary』

umimati0612.jpg(c)2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

 今週取り上げる最新映画は、世界的にも評価の高い是枝裕和と、マニアックな支持を集める冨永昌敬、2人の個性派監督による待望の新作。それぞれ鎌倉と水戸でロケを行い、地方の街並みと自然をドラマの背景として有効に機能させている点も見どころだ(いずれも6月13日公開)。


 『海街diary』は、吉田秋生の人気コミックを原作に、『そして父になる』(2013年)の是枝裕和監督が主役級の人気女優4人を揃えて実写映画化した作品。鎌倉の古い一軒家で暮らす長女・幸(綾瀬はるか)、次女・佳乃(長澤まさみ)、三女・千佳(夏帆)の香田家3姉妹のもとに、15年前に家族を捨てて出ていった父の訃報が届く。山形での葬儀に出席した3人は、そこで腹違いの妹すず(広瀬すず)と対面。実母と既に死別していたため身寄りのなくなったすずが、葬儀の場で気丈に振る舞う姿を見た幸は、すずに「鎌倉で一緒に暮らさない?」と声をかける。提案を受け入れたすずが鎌倉に引っ越してきて、四姉妹の新たな生活が始まる。

 女優4人の魅力を活かしつつ、姉妹のキャラクターを明瞭に描き分ける是枝監督のしなやかな演出が光る。生真面目な役柄の綾瀬と、奔放で露出度高めの長澤が好対照。広瀬はある意味別格の扱いで、成長の一瞬一瞬を映像に刻むかのようなイメージビデオ風のシーンが美しい。菅野よう子による音楽はつつましく情感に寄り添う。さらに波、雨、風、鳥、虫といった環境音も繊細にとらえられ、趣いっぱいに鎌倉の風情が広がる。身近な人の死を通じて生と絆の価値を実感する四姉妹の物語は、親子やきょうだいのあり方という、忘れがちだが大切な普遍のテーマを改めて思い出させてくれる。

 『ローリング』は、『パビリオン山椒魚』(06年)、『乱暴と待機』(10年)の冨永昌敬監督が、水戸短編映像祭で縁のある茨城県水戸市で全編ロケを敢行して描いたオリジナル作品。水戸のおしぼり業者で働く貫一(三浦貴大)は、10年前に通った高校で盗撮事件を起こし失踪していた元教師の権藤(川瀬陽太)と再会する。権藤はかつての教え子たちから糾弾され面目を失い、さらに東京から連れて来ていたキャバクラ嬢みはり(柳英里紗)が貫一に奪われてしまう。一方、かつて権藤が盗撮した動画に貫一の悪友たちが目をつけたことで、芸能事務所を巻き込む騒動に発展する。

 リリー・フランキーにダチョウ倶楽部・上島竜兵を足したような風貌の川瀬陽太が演じる権藤のダメ人間っぷりがたまらない。今年9本もの出演作が公開される売れっ子・柳英里紗は、ふわっとした存在感を漂わせつつ、三浦貴大とのベッドシーンでは生々しいエロスを印象づける。哀愁と自虐が笑いを誘う川瀬のナレーション、人を食ったような渡邊琢磨の音楽、オフビート気味にぐいぐい進むストーリーがからみ合い、独特の冨永ワールドが展開。ハードディスクをドリルで破壊、ソーラーパネル詐欺、原発労働といった今どきのネタをさらりと盛り込んで、東京と地方の関係や格差社会の問題というより大きな構図を示唆している点も見逃せない。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『海街diary』作品情報
http://eiga.com/movie/80446/

『ローリング』作品情報
http://eiga.com/movie/81845/

最終更新:2015/06/12 23:00
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