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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 個性派漫画家のやらかしすぎ人生
『透明なゆりかご』沖田×華インタビュー

元看護師・元風俗嬢・整形マニア……超個性派漫画家が語る、“やらかしすぎ”の人生

――風俗や整形などの経験を描いた今までの著書と比べると、この『透明なゆりかご』は少しテイストが違いますよね。高2でここまで産婦人科の現実を経験するって、すごいことではないでしょうか?

沖田 まだ処女でしたしね(笑)。バイトの初日に「中絶」に立ち会ったんですよ。カーテン開けたら、女の人がパカーッて足広げていまして。そんなの見るのも初めてだったのに、ましてや中絶手術なんて……マスクの下で、あわあわエア絶叫してました。術後に先生から「これを片づけといて」って塊のようなものを渡されて、それを決められたケースに入れて、シールを貼るんですけど、そこに性別欄があったのを見て初めて「あぁこれは……」と気が付いた。不思議なことに、ちっとも気持ち悪くなかったです。

――本にもありますが、「日本人の死因の第1位は人工妊娠中絶」(1997年当時)というのも、あまり知られてはいないことですよね。

沖田 病気じゃないんでね。(中絶は)防ごうと思ったら防げるような気がしないでもないじゃないですか。でも、こんなに産めない事情の人がいるんだ、10代の女の子がデキちゃって、彼氏は逃げちゃって、親にも言えないどうしようっていうシチュエーションはとても多い。知識がないこともあるけど、男に言いくるめられちゃう子がほとんどじゃないかな。「大丈夫、外に出すから」とかね。それじゃ遅いんだよ! 「避妊して」って言って嫌われたらどうしようって思っちゃうんですよね、好きだから。

――かといって、この漫画はそういう男性への怒りが燃料になっているわけではないので、かえって胸に迫るというか、答えのない迷路にはまったような気持ちにもなりました。

沖田 半分くらいは「仕方ない」って考えているのかもしれません。男と女のズレは、どうしようもないなと思っちゃいますね。たぶん、男に対して期待してないんだと思う。こうしてほしいとかああしてほしいとか思うから不満も出てくると思うんですけど、私はそういう感情が薄いんですよ。男のキャラを描けない理由もそれ。男のキャラクターは描いても動かないので、すぐ殺しちゃう(笑)。

――『透明なゆりかご』で印象的だったのは、高校当時の沖田さんが「母性とは何か」考えあぐねているくだりでした。もしかしたら、この本のテーマそのものなのかもしれませんが。

沖田 そうですね。母性は、たぶん私自身にはないものなんです。看護学校時代も「母性とは脳みその中にシステム的に組み込まれていて、それが出産と同時に出てくる」って教わったんですけど、赤ちゃんを見ても自分の中にまったく感知できなくて。あれほど出産を心待ちにしていた人が、実際に生まれてきた赤ちゃんを見て「違う!」って否定する現場も目の当たりにしてきました。あまりにも個人差が大きすぎて、一言で「母性とはこういうもの」なんて言えないと思います。言えたとしても、それはあくまでも自分が思っている範囲のことであって、結論は出ないものじゃないですか。でも母性がなくても子どもを育てている人はいる。そういう人に「それでも子どもは育てられるものなの?」って聞いたら「義務だ」って。産んだこの子をいっぱしに育てるという義務。だからといって、嫌々やっているわけじゃないんですよ。自分に与えられた仕事として、ちゃんと子育てをする。そういう人もいるから「母性を語る」って相当難しいことだと思います。ただ女が唯一子どもを産める性だから、出てこざるを得ない問題なんだろうなとは思います。

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