日韓国交正常化50周年、本当にこのままでいいのか?『韓国インテリジェンスの憂鬱』
#本 #韓国
今年6月22日は、日本と韓国にとって、ちょっと特別な日ということをご存じだろうか?日本と韓国はその日、国交を結んでちょうど50周年を迎えるのだ。しかし現在、国交正常化50周年を記念する祝福ムードはまったくなく、むしろ日韓関係は過去最悪に冷え込んでいるとさえいわれている。
過去最悪の日韓関係、その原因はどこにあるのだろうか――。それを韓国人に、しかも名だたる知識人に直接ぶつけてみた意欲作が『韓国インテリジェンスの憂鬱』(KKベストセラーズ)だ。
本書には、6人の韓国人識者が登場する。トップバッターは、ヒュンダイ自動車の元CEOで、国会議員を務めたこともあるイ・ゲアンという人物。ヒュンダイ自動車といえば、韓国が“世界ブランド”と自賛する自動車企業だが、日本の自動車技術を取り入れて成長した企業だ。その元CEOイ氏は、日韓の経済協力についてこんなことを話している。
「1962年に韓国が初めて経済開発計画を行ったときは、何でも日本から学べばいいと考えていました。また、日本にもその意思がありました。日本にとって韓国は“生徒”だったのです。両国は長らく先生と生徒の関係でしたが、いつしかその差は縮まりました。先生と呼ぶには生徒が大きくなりすぎましたし、かといって相互に恩恵を与えられるほど生徒が成長したわけでもないという時代を迎えています。相互関係というのは、互いに補完的か、代替的な関係でなければ成り立たないのですから、現状のままだとお互いにメリットは少ない」(本文より)
最近、「日韓の経済協力にはメリットがないのでは?」と考える人が増えているが、イ氏も同じように見ているのだ。
本書にはその他、弁護士、歴史学者、社会学者などが登場するのだが、特に興味深かったのは韓国外務省(外交通商部)で東北アジア局長を務めたチョ・セヨン氏のインタビュー記事だ。チョ氏は、1998年の日韓パートナーシップ宣言の韓国側担当者で、小渕恵三首相と金大中大統領の首脳会談で通訳も務めたほどの人物。こちらも日韓関係に精通した、なかなかの人物というわけだろう。
ただ、他の登場人物が“一人語り調”でまとめられているのに対して、チョ氏の部分だけは編著者がわざわざ前書きで「本人の希望もあってインタビュー形式で掲載した」と断っており、なにやら特別な事情があったようにも見える。実際に、チョ氏のインタビューはかなり刺激的な内容。すべてを紹介できないのが残念だが、例えば、日本の嫌韓現象の原因についての返答はこうだ。
「日本の立場としては、日本の経済協力によって韓国が豊かになれたのだから、日本に対して態度も良くなると考えていたのに、韓国は豊かになると過去問題を主張するようになりました。(中略)そんな中で韓国が中国と関係を深め、日本に反発するので、裏切られたという思いもあるのかもしれません。その余裕のなさが嫌韓感情として表れるのでしょう。慰安婦問題、独島(竹島の韓国呼称)問題などのきっかけがあると、寂しい心が嫌韓感情として表れる。ヘイトスピーチもそうです」(本文より)
なんとも一方的な意見だが、もし現在の韓国外務省の感覚も同じようなものであるとしたら、日韓関係がギクシャクする理由もなんとなくわかる気がする。誤解のないように断っておくが、本書に登場する人物には、もちろん「ハッ!」とさせる鋭い指摘も多い。
いずれにせよ、韓国知識人の“レベル”を知る上でも、役に立ちそうな『韓国インテリジェンスの憂鬱』。韓国の国内問題、韓国人の日本観、そして次の日韓関係50年を考える上で、目を通しておいて損のない一冊だ。
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