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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.324

石井岳龍と染谷将太のインディーズ魂が大爆裂!! 鼓膜と脳天を直撃する轟音上映『ソレダケ that’s it』

soredake02.jpgドン底の下流社会で出会った大黒と阿弥(水野絵梨奈)。2人は現代のボニー&クライドとして逆襲の狼煙を上げることに。

 追っ手から逃れる中で、大黒は自分と同じような境遇の裏風俗嬢・阿弥(水野絵梨奈)と出会う。大黒と阿弥はお互いを罵り合いながらも、共にドン底の状況から脱出することを夢想する。阿弥は裏社会で女たちを束ねる女衒的存在の猪神(村上淳)の庇護を求めようとするが、それではダメだ。裏社会を牛耳るギャングの大ボス・千手(綾野剛)の支配下に猪神も恵比寿も置かれている。ドン底から這い上がるためには、元凶である極悪非道の男・千手を倒すしかない。

 死んだように生きながらえることよりも、死ぬ気で生きることを大黒は選択する。ただ逃げ回っていた前半はモノトーンだった世界に色彩が宿る。「逃げない自分になることで、違う未来を手に入れる」という大黒の決意に阿弥も同調する。そしてクライマックス、武装した大黒と阿弥は千手のアジトへと殴り込む。コルト・ガバメントをガムテープでぐるぐると右手に巻き付ける大黒。阿弥は『007』のジェームズ・ボンドが愛用するワルサーPPK。2人とも死んでも戦い抜く覚悟だ。高倉健は『昭和残侠伝』シリーズで池部良と共にケジメをつけるため、敵対するヤクザ一家に乗り込んだ。“スリーピング・アイ”ロバート・ミッチャムも『ザ・ヤクザ』(74)で高倉健と共闘し、愛する女の弔い合戦に向かった。若松孝二監督の『われに撃つ用意あり』(90)では、原田芳雄と桃井かおりが封印していた情熱と自尊心を取り戻すためにカチこんだ。命を預け合ったもの同士が、虎穴へと押し入っていく。

 このときの大黒と阿弥は男と女ではなく、生きるために戦う2匹の野獣となる。2匹の野獣は天に向かって咆哮する。ブッチャーズのサウンドが石井岳龍のインディーズ魂に火を点け、その火の熱さがメラメラと染谷将太、さらに水野絵梨奈へと燃え移る。こんなにも熱く、火傷してしまいそうな映像に出会うことはそうそうない。視覚と聴覚だけでなく、床の振動や空気の音圧も感じ、観ている我々の肌もざわざわと粟立つ。

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