結婚発表のハンマー投げ室伏広治 「家賃1万6,000円」生活苦の実母を援助しないワケ
#週刊誌 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
さて、フジテレビが絶不調である。現代とポストがそのことを扱っているが、この根底にあるのは長きにわたってフジを牛耳ってきた日枝久フジHD会長の長期政権、支配にあるのは間違いないのではないか。
日枝会長は私の高校の先輩だから、チョッピリ言葉を選んでいわせていただくが、晩節をこれ以上汚さず早くお辞めになったほうがいい。名経営者がその地位に固執し続けたために「老害」と呼ばれることはままある。あなたもそうした人たちを見てきたのだから、まず一線から引いて、後輩たちを見守ってやるべきであろう。
現代は、私も知っている太田英昭HD社長が、わずか2年で産経新聞の会長に「飛ばされた」ことを報じている。
現代によれば太田氏が実力を持ってきたため「寝首をかかれ」たくない日枝氏が飛ばしたというのだが、それだけではなく、フジの中で貢献してきた人たちが次々に配置転換されているという。
中でも、安藤優子キャスターの夫君である堤康一氏が情報政策局長から子会社の社長に飛ばされ、安藤も番組から「放逐」されるのではないかとポストが報じている。
だが、日テレの『ミヤネ屋』に対抗するために鳴り物入りで始まった『直撃LIVEグッディ!』は視聴率1%台が続いているそうだから、私は彼女の降板はもちろん、番組の終了もあってもいいと思うが。
安藤には失礼だが、もう一度初心に返って現場取材からやってみたらどうか。彼女のような大物が老体に鞭打ち(失礼!)、サツ周りや政治家取材をやったら、いい情報がとれると思うのだが。
ところで、フライデーを見ていて気がついた。「フライデーって貧乏人の味方なんだ」と。2本紹介しよう。まずはハンマー投げの金メダリスト・室伏広治氏(40)の実母が生活苦にあえいでいるという記事。
母親はセラフィナさん(64)は、自身もルーマニアの陸上選手で、広治氏の父・重信氏(69)と1972年に22歳で結婚して広治氏と由佳さん(38)をもうけたが、88年に離婚している。
その後、別の日本人と結婚し、広治氏の異父弟に当たる秀矩氏(25)を産んでいる。だが、再婚相手は「事業に失敗し、失踪」(秀矩氏)してしまったという。
秀矩氏も陸上をやっていて、高校の推薦を取れたが入学金が払えず、兄に連絡したら「ガンバレよ」と言って20万円を渡してくれたこともあったそうだ。
だが、次第に疎遠になる。5月に広治氏は結婚を発表したが、母親に連絡はなかった。いま母親は、体調を崩して生活保護で暮らしている。
「家賃は1万6,000円で、夏場には室内の温度が40℃近くになります。生活保護でもらっているのは月に7万円ほど。暮らしは苦しいです」(セラフィナさん)
だが、広治氏はフライデーに対して、こう答えている。
「私の実母は、自分の意思で私が13歳のときに私と妹を残して、家を出て新しい家庭を持ちました。(中略)離婚成立後30年近くすぎているにもかかわらず、私が扶養を含め(実母の)面倒をみるのは、父親を裏切ることになると考えています」
父親は、彼女は不倫をしていたと思っていて、着の身着のままで追い出したそうだが、秀矩氏は「母が再婚相手と親しくなったのは離婚後」だと聞いているそうだ。
真相は当人にしかわからないが、広治氏の言い分は筋が通っていると思う。だが、肉親の情がいくらかでもあればと、柔な私は考え込んでしまうのだ。
お次はこれ。5月17日未明、川崎市にある簡易宿泊所「吉田屋」から出火して隣接する「よしの」まで焼き尽くし、現在わかっているだけで7名の遺体が発見されている。
「よしの」で5年暮らしていた40代のNさんは福井県出身で、高校卒業後にライン工として働いていたが、父親の連帯保証人になったことが原因で失職し、妻とも離婚。一時はホームレス生活も経験し、人生に悲観して自殺を試みたこともあるという。
「着の身着のままで必死に玄関へ向かって走りました。荷物は全部、部屋の中です。サイフの中には生活費が6万円くらい入っていたのですが、焼けてしまいました」(Nさん)
「吉田屋」は1泊2,000円前後で、中には10年以上も暮らしている人もいたそうだ。80代の男性がこう語る。
「吉田屋は、コンロや炊飯器があって自炊できるから宿泊費以外のお金がかからず、生活保護者にはありがたかった」
フライデーによれば、生活保護受給者には川崎市から当座の生活費として2,000円が貸し出された(2万円の間違いじゃないの?)ほか、計5~12万円の見舞金が支給される見込みだという。
ポツダム宣言など読んでなくてもいいから、安倍首相にはこうした記事を読んでほしいと思う。
今週の最後は、橋下徹大阪市長の各誌の記事である。次のコメントは、文春の問いかけに橋下氏が答えたものだ。
「家族への負担はむちゃくちゃ大きかったですね。妻もそうですけど、子供がよく耐えてくれたなと思います。いろいろ言われたこともあるでしょうけど、うちの子供の学校や友達がうまくやってくれた。家族に対して相当負担をかけてきましたから、任期が終わる十二月から、この八年分を何とか取り戻していきたいなと思っています」
橋下徹敗れる。彼が政治生命を賭けた「大阪都構想」が、住民投票で僅差ながら否決されたのである。
新聞の事前調査もほぼ互角。投票日当日の出口調査では、賛成が反対を1ポイントから2ポイント上回っているという情報が駆け巡った。
橋下氏が会見を行う部屋にはテレビモニターが据えられ、NHKの開票速報が流れていたが、常に賛成票が上回っていた。新潮によると、維新の会のスタッフも余裕の表情を見せていたようだが、突然、〈反対多数確実「都構想」実現せず〉のテロップが流れ、江田憲司代表と別の場所でテレビを見ていた松野頼久幹事長は「ウソだろ……違うよ」とうめいたという。
その30分後に会見した橋下氏は、意外にさばさばした表情で「民主主義は素晴らしい」「政界は市長の任期が満了する12月で引退する」といい、「権力者は使い捨てがいい」との迷言を残した。「これからの僕は国民の奴隷ではない」と言い捨て、「あとは野となれ山となれ。そんな投げやりなニュアンスが言外に漂っていたのである」(新潮)
残された維新のメンバーは大慌てで、江田代表まで辞任して後任に松野氏を推したが、混乱は収まらない。
切れ者、影の総理などともて囃す者もいる菅義偉官房長官も、橋下氏敗北で痛手を負ったと新潮が書いている。政治ジャーナリストの伊藤惇夫氏がこう解説する。
「今回、菅長官は二つの傷を負ったと言えます。まず、地方自治、地方分権が叫ばれているなか、中央の政治家が地方組織の意に反した行動に出たこと。もう一つは、彼の後方支援が功を奏さなかったという結果そのものです」
新潮では政治部デスクが、安倍首相は憲法改正には維新の会の数が必要なので、橋下氏に求心力を保持させるために「橋下さんを民間閣僚として起用する」ウルトラCもありうると言っている。
私は、この説には組みしない。ポストの連載でビートたけしが言っているのが、一番的を射ていると思う。
「政治家としての橋下徹を論じるときに、よく『政治家らしい根回しができないからダメなんだ』みたいな批評する人がいるんだけどオイラは違うと思うね。この人は『既存の権力や政治のいうことをまったく聞かない』『他の政党とまったくなじまない』ってのがウケたんだし、だからこそ『地方分権』『官僚機構をぶっ壊す』なんて旗印もリアリティーがあったわけだからね。相変わらず過激な発言はするんだけど、結局そういう大事なところで『数の論理』とか『政治的なしがらみ』みたいなものに負けちゃったところが、カッコ悪いし、求心力を失った理由じゃないかと思うんだよな。(中略)その点、東(東国原英夫)の嗅覚ってのは、やっぱり動物並だよな。維新という船が沈没する前に、チョロチョロ逃げ出しやがったからね。『お前は沈没船のネズミか』ってオチなんだよな。政界遊泳のセンスは、アイツのほうが橋下さんより上なんじゃないの(笑い)」
かくして、橋下徹の時代は終わりを遂げた。チャンチャン!
【蛇足】
現代の巻頭特集「『私が見た金正恩の狂気と真実』」とポストの「マンション相場に大暴落のサインが出た」を取り上げなかった理由を少々書いておこう。
現代は金正恩の側近幹部の話を「中国を経由する形で、信頼できる人物を通して」聞いたと書いている。さまざまなルートを通じて接触したことはわかるが、内容にその人間しか知らない「秘密の暴露」があるのかどうかが、こうした記事の信頼性を担保するのだが、残念ながらそれが少ない。
5月13日に公開処刑されたといわれる金正恩の側近である玄永哲人民武力部長だが、この側近は彼は殺されていないと言っている。あるミスリードがあって「少し休んでいろ」と言われているだけだというのである。
確かにミスリードの中身は初めての情報ではあるが、玄が生きているというのはメディアですでに報じられているから、現代が初出というわけではない。
金正恩の「素顔」も興味深いが、初めて知ったというほどのものではないように思えるので、今回は入れなかった。
ポストの「不動産大暴落」情報はいろいろなメディアで報じられているし、あってもおかしくないと、私も思う。
こうした「狼が来る」情報は、ここだけですよという情報があるかないかが勝負になる。私にはそれがあまりないように思ったので、ここに入れなかった。
(文=元木昌彦)
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