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“迷”作短歌集が文庫本で復刊!『念力家族』が短歌の常識を覆す!

nennrikikazsoku05226.jpg『念力家族』朝日新聞出版

 「短歌」といえば、俳句と並び日本が生み出した代表的な定型詩であり、万葉の昔から現代まで読み継がれてきた言葉の芸術。そこには、日本人が古来から育んできた美しき心が映し出されている。西行法師は「願わくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月の頃」と自分の死を見つめ、在原業平は「名にし負わば いざ言問はん都鳥 わが思ふ人はありやなしやと」と京都を離れた悲しみを綴った。まさにクールジャパン。31文字が織り成す叙情的な風景こそが、日本民族の豊かな感性なのだ!

 ……だが、歌人・笹公人の歌集『念力家族』(朝日文庫)に収められている短歌は、どうも様子が違っている。

「ベランダでUFOを呼ぶ妹の 呪文が響く我が家の夜に」
「ワシントンの伝記を読みし弟が 庭の桜の木を伐っている」
「エジソンに勝たんと発明繰り返す 父の背中の鳩時計鳴る」
「中華丼天丼カツ丼親子丼 牛丼うな丼兄の食欲」

 ここには、「わび・さび」や、「美しい日本」はない。その代わりに、キャラ立ちした「念力家族」たちのバカバカしくも愛すべき姿が見えてくるのだ!

 もともと、2003年に1,000部限定の通信販売で単行本として発売された本書。通信販売としては異例の好評を博し、04年にインフォバーンから一般発売されると、一躍、新人歌人・笹公人の名前を世に知らしめた。それから12年、今年3月にはなんと『念力家族』がNHK Eテレでまさかのドラマ化という展開に! これを記念して、文庫本として復刊されることとなったのだ。

 1975年生まれの笹が繰り出す作品の数々は、まるで深夜ラジオの投稿ネタのようなシュールな笑いに満ちている。そのひねくれたユーモアセンスと、鋭く突き刺さる言葉の数々が、糸井重里、山田太一、大林宣彦、そして蜷川幸雄ら、各界の一流どころの感性を刺激する。格調高い「短歌」のイメージを覆すその作風は、作者自ら「お笑い短歌」と表現されているほどだ(インタビューで、笹は「爆笑問題を見てお笑い芸人への夢を諦めた」と語っている)。もともと、寺山修司に影響を受けて短歌を志した笹だが、寺山が、演劇や映画などさまざまなジャンルを横断しながら活躍したように、テクノポップバンドのミュージシャンやラジオパーソナリティとして活動していることも、型破りな作品を生み出し続ける一因だろう。

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