飽和状態の“ハーフ枠”でユージがひとつ抜き出る理由『解決!ナイナイアンサー』(5月12日放送)を徹底検証!
#タレント解体新書
(2)謙虚な姿勢を打ち出す
『マミー』の中に、こんなエピソードがある。小学生時代、クラスで自慢大会がブームになった時期、ユージは自慢することがなく悲しい思いをしていたそうだ。そこで母親に相談してみたところ、自分の曾祖父がドミニカ共和国の元大統領だったという事実を初めて知り、自信満々にそれをクラスメイトに自慢するのだが、ウソつき扱いされてさらに孤立してしまったというのだ。
ハーフタレントとしてのキャラクターは数々あるのだが、その中でも最も難易度の高いものが、上から目線でのキャラクターだ。確かに火がつくのは早いのだが、顔やスタイルのよいハーフタレントがそれをやってしまうと、無意識下にコンプレックスを抱いている日本の視聴者からは反感を買うことが多い。そして火がつくのが早い分だけ、消費される速度はそのぶんだけ早く、このキャラクターを保ったまま芸能界を長く生きていくのは至難の業だといえるだろう。
この辺りユージは、小学生時代の自慢大会の記憶もあってか、謙虚な姿勢を決して崩さない。たとえば『趣味の園芸』に出演する際も「ちょっとやっていいですか、ボクも」とあくまでも園芸初心者の立ち位置を守り、また共演者がおかしなことを言った際はツッコミを入れながらも「いや、ボクは好きですけど」とフォローを付け加えることを忘れない。これはユージ本人の性格的な優しさというのももちろんあるのだろうが、この謙虚な姿勢を崩さなければ、長く必要とされるタレントでい続けることができるはずだ。
(3)個としてのキャラクターに成長する
『マミー』という自伝的小説は、一人の少年が個としてのアイデンティティを持つまでの物語だ。母子家庭となり、いじめられっ子となり、ヤンキーになる。これらはすべて個としてのアイデンティティではなく、カテゴリーにすぎない。そんなユージが自分を見つめ直し、そして自分自身の意志で母親との仲を修復する、つまり個としてのアイデンティティを確立するというのが『マミー』で描かれている物語だ。
ハーフタレントからの脱却において必要なのは、まさにこの部分である。ユージにおいてその転機となったのは間違いなく結婚と、それと同時に父親になったというタイミングであり、現在のユージの多くの仕事は「ハーフタレント」ではなく、むしろ「良き父親」としてのそれだ。それは例えば『趣味の園芸』での一言にも表れている。前回トマトを育てた感想を尋ねられたユージの答えは「トマト、ぼく大好きだし、息子も大好きなんですよ」というものだった。この「息子も大好き」という一言を付け加えるということが個としてのアイデンティティそのものであり、ユージが個としてのキャラクターに成長したという証だといえるだろう。
ユージの興味深い点は「ハーフタレント」からの脱却、いわばタレントとしての成長が、ユージ本人の環境の変化やあるいは人間的な成長と、そのままリンクしているというところにある。ユージ本人が人間として経験を得れば得るほど、タレントとしての幅もそのまま広がっていくことだろう。そう、ユージはまだ、成長過程にある。これまでの「ハーフタレント」が産み出し得なかったタレント像を、もしかしたらユージなら、見せてくれるかもしれない。
【検証結果】
ユージの青春自伝的小説『マミーが僕をころしにやってくる』は、母親からユージに宛てた手紙で終わっている。母親との仲が決裂し、ユージがアメリカの祖母の家で暮らすことになってからも、母は遠くからユージのことを見つめていたそうだ。その手紙の一節にはこうある。「おばあちゃんの家で花を育てていると聞いた時は、涙が出るほど笑ったことを覚えています。」と。人も、花も、育てるのは難しい。いつだって思うようにはいかないし、時間も忍耐も必要だ。それでも諦めてはいけない。育てることを諦めなければ、いつかきっと、花は咲くのだ。
(文=相沢直)
●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa
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