人工知能搭載ロボットに生存権は認められるか? サイバーパンクなホームドラマ『チャッピー』
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そんなとき、警官ロボットの戦闘能力の高さに目を付けたギャングのニンジャ&ヨーランディが、ディオンと廃棄ロボットを拉致。ニンジャたちが立ち会う中、人工知能を搭載したチャッピーが誕生する。天馬博士によって作り出された鉄腕アトムが心優しいお茶の水博士によって育てられたように、チャッピーはディオンの手を離れて、ギャング団のアジトで育てられることに。赤ちゃん状態のチャッピーを、女ギャングのヨーランディが目一杯かわいがる。ヨーランディは自分の肉親に求めていた愛情を、代わりに自分が母親になることでチャッピーに注ぐ。一方、強盗稼業をなりわいとするニンジャは、チャッピーに武器の使い方を習得させる。生みの親であるディオンは“ロボット三原則”に基づいて「人間を銃で撃ってはいけない」とチャッピーに教えるが、育ての親となるニンジャはストリートで生きていくためにはタフさが必要だと力説する。「お前のバッテリーはあと5日間しかもたない。代わりのボディを手に入れるために、お前にはやらなくちゃいけないことがある」と。自分が生きることと、モラルを守ることはどちらが大切か? 生まれて間もないチャッピーは、難しい命題をその真新しい頭脳で考えなくてはいけなかった。
人工知能は搭載されているものの、頭の中はまだ真っ白なチャッピーが、ニンジャ&ヨーランディ(南アフリカで人気の夫婦ラッパー)たちと暮らすことでどのように育っていくかが本作の見どころ。モーションキャプチャーを使ってチャッピーを演じたのは、ブロムカンプ作品の常連俳優シャールト・コプリー。チャッピーの好奇心に満ちた幼年期、親の言うことにいちいち「なんで?」「どーして?」と質問で返す少年期、自分は何のために生まれてきたのかに大いに悩む思春期……と繊細に演じ分ける。そしてチャッピーの成長に従い、ニンジャ&ヨーランディも大きく変わっていく。裏社会で生きていくための集団だった彼らだが、チャッピーの世話を焼き、生活を共にするうちに関係性が次第に変容していく。ヨーランディはチャッピーに愛情を注ぐことで母性が芽生え、荒くれもののニンジャでさえ懸命に自分の真似をするチャッピーを見ているうちに父性に目覚めることになる。ただのワルの集まりだったのが、チャッピーを中心にした“家族”という関係性が生じていく。いくつもの配線が繋がってチャッピーが動くように、ニンジャ&ヨーランディもチャッピーとの関係性を重ねることで“家族”として起動することになる。
ロボットながら自意識を持ったチャッピーは、やがて人間社会で迫害されるはめに。中でもディオンとライバル関係にある科学者のヴィンセント(ヒュー・ジャックマン)は重装備ドローンを操作して、チャッピーをこの世から抹消しようとする。ミッシェル社長も人工知能を搭載したロボットは危険だと考えている。だが迫害されることで、チャッピーとニンジャ&ヨーランディはより家族の繋がりを濃くしていく。この輪にディオンも加わり、これまでに見たことのない新しい家族像が生まれる。そして、最初は全然かわいくないと思っていたチャッピーに、すっかり夢中になっている自分がいることに気づく。
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