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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.320

マイノリティー側から眺めた世界はかくも美しい! 早熟の天才が描く社会派ドラマ『Mommy/マミー』

mommy_02.jpgオアシスの「WONDERWALL」、ラナ・デル・レイの「BORN TO DIE」などサントラの選曲センスも堪らんものがあります。

 『Mommy』の主人公は、ADHD(注意欠如多動性障害)を抱える少年スティーヴ(アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン)と女手ひとつでスティーヴを育てるシングルマザーのダイアン(アンヌ・ドルヴァル)。スティーヴは感性豊かな男の子だが、社会常識に欠け、キレやすい。いったん暴れ出すと、手が付けられなくなる。夫との死別後、スティーヴを矯正施設に預けていたダイアンだが、スティーヴは施設でも問題を起こしてしまう。引っ越し先で母子水入らずの新生活を期待と不安混じりでスタートさせることに。案の定、ささいなスレ違いからスティーヴの感情が爆発。新居での初日から母子間で壮絶なバトルを繰り広げることになる。そこへひょっこりと顔を出したのは、お向いに住んでいる休職中の教師カイラ(スザンヌ・クレマン)だった。感情の起伏の激しいスティーヴとダイアンの2人だけだとケンカが絶えないが、おっとりした性格のカイラが間に入ることで、3人はうまくバランスを保つことができた。

 カイラも勤務先の学校でトラブルがあったらしく、吃ってゆっくりとしか話すことができない。失声症らしい。長らく引きこもり状態が続いていたカイラだが、ダイアンの陽気さとスティーヴの無邪気さに心が動かされる。2人の世話を焼くことで、カイラ自身も癒されていく。ダイアンが清掃員の仕事に出ている間、集中力が続かないスティーヴにカイラは根気よく勉強を教え続けた。それまで就学は不可能と思われていたスティーヴだが、表現力の才能を伸ばし、進学を考えるようになる。3人にとって美しい夢のような時間が過ぎていく。

 交通ルールなんて知らないよと、スケボーに乗ったスティーヴが公道を疾走する姿は、まるで野に放たれた野生動物のようにとても自由だ。オアシスの「WONDERWALL」をはじめとする名曲が次々と流れ、美しいパステルカラーの光景と溶け合っていく。スクリーンサイズが横長のシネスコサイズではなく、1対1の正方形であることから、どのシーンもレコードのジャケット写真が動画となって流れているように感じられる。主人公のスティーヴと同様に、監督のグザヴィエも映画の定型にとらわれることがない。

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