マイノリティー側から眺めた世界はかくも美しい! 早熟の天才が描く社会派ドラマ『Mommy/マミー』
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映画とはコドクな人間によく効く薬である。医者の処方箋なしで手に入り、気分をハイにもダウナーにもしてくれる。ただし、粗悪品が多く出回っているので、カスを握らせられることもままある。その点、いま注目度急上昇中のグザヴィエ・ドランは非常に純度が高い新銘柄だ。不純物だらけの映画にすっかり馴らされていた人でも、グザヴィエ・ドランの最新作『Mommy/マミー』には心地よいトリップ感を味わうことができるだろう。
グザヴィエ・ドランは1989年のカナダ・モントリオール生まれ。弱冠20歳のときに主演作『マイ・マザー』(09)で監督&脚本デビュー。イケメン好きな女子がよだれを垂らしそうな端正なルックスの持ち主だが、ゲイであることをカミングアウトしている。性同一性障害の教師とその恋人との10年間にわたる葛藤を描いた『わたしはロランス』(12)は日本でもヒット。25歳にして早くも監督5作目となる『Mommy/マミー』を発表し、カンヌ映画祭で巨匠ゴダールと審査員特別賞を分かち合っている。超新星X(Xavier Dolan)が映画界でどれだけ期待されているかが分かる。
グザヴィエ作品はどれもマイノリティー側の人間が主人公だ。3人の男女の恋愛トライアングルを描いた『胸騒ぎの恋人』(10)や心理サスペンス『トム・アット・ザ・ファーム』(13)でも同性愛の若者を演じた。マイノリティー側からの視界がとても新鮮に感じられる。また、非常に濃い母子関係が描かれるのもグザヴィエ作品の特徴。新世代の申し子と評されるグザヴィエだが、作品の内容そのものは意外とスタンダードではある。そして何よりも彼はビジュアルセンスに優れている。色彩豊かなグザヴィエ作品を浴びるように観ることで、脳内物質が大量分泌され、テンションが上がってくる。さらに、鮮やかな映像に絶妙にマッチした音楽が心地よい。天才児グザヴィエの目や耳を通すことで、世界はこんなにも美しく、それゆえに切ないということを再認識させられる。
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