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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.319

障害者コミュニティは壮絶なヒエラルキー社会!? 字幕、吹替えなしの肉弾ドラマ『ザ・トライブ』

theribe02.jpg寄宿舎で暮らすアナたちは体を売ることで、せっせとお金を稼ぐ。彼女が守銭奴になったのは、自分の置かれた現状から脱出するためだった。

 族は裏ビジネスにも手を出していた。リーダーの愛人・アナ(ヤナ・ノヴィコヴァ)と同室の女の子は、夜になると寮を抜け出し、トラックの運転手たちを相手にした売春にいそしむ。ある晩、アナたちをトラックの溜まり場まで送迎していた上級生が、バックするトラックの発信音が分からずに轢死してしまう。その後任に選ばれたのがセルゲイだった。ビッチなファッションに着替えたアナに接しているうちに、セルゲイは辛抱たまらずお金を渡して筆下しをお願いする。セルゲイ、エッチのほうでもパワーファイターぶりを発揮。無言で肉体と肉体をぶつけ合うセルゲイとアナ。セルゲイはリーダーへの上納金をチョロまかしてはアナに貢ぎ、組んずほぐれつの愛欲の日々が続く。リーダーの女に手を出し、しかも上納金をくすねていたことがバレ、セルゲイはリンチに。アナは妊娠が発覚。セルゲイとアナの欲望に身を任せた青春は静かに崩れていく。

 本作が長編デビュー作となるミラスラヴ・シュボスピツキー監督は、1974年ウクライナの首都キエフ生まれ。「子どもの頃に通っていた学校の近くに聾唖学生たちの寄宿舎があり、彼らのコミュニケーションの取り方、ゼスチャー、ケンカの仕方に惹き付けられた」と語っている。全員が聾唖者であるキャストはSNSを使って募集し、ロシア、ウクライナ、ベラルーシから集まった約300人の中からオーディションで選ばれた。カツアゲ相手の足を掴んで、逆さ吊りにしてみせる怪力を見せた主人公セルゲイ役のグレゴリー・フェセンコは、キエフのリアルなストリートキッズ。撮影期間の3カ月、不良仲間から隔離しての俳優デビューだった。大胆なセックスシーンに挑んだアナ役のヤナ・ノヴィコヴァもまったくの新人で、チュリノブイリに近いベラルーシ出身。女優になるために、恋人と別れての決意の出演だった。撮影の合間、キャストやスタッフは反政府デモや暴動に度々参加していたそうだ。それもあって、作品の中にも殺伐とした乾いた空気が流れ込んでいる。

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