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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.319

障害者コミュニティは壮絶なヒエラルキー社会!? 字幕、吹替えなしの肉弾ドラマ『ザ・トライブ』

theribe01.jpg聾唖者たちがむきだしの演技を見せる『ザ・トライブ』。セルゲイ(グレゴリー・フェセンコ)とアナ(ヤナ・ノヴィコヴァ)との恋愛は成就するのか。

 聾唖学校を舞台に、手話による交流を描いた青春感動ドラマなのだろうと勝手に想像していた。上映が始まり、自分の思い込んでいたイメージとは180度異なり唖然呆然となる。ウクライナ映画『ザ・トライブ』は聾唖学校が舞台だが、そこで描かれているのは暴力とセックスが横行する世界。障害者たちのコミュニティ内でのヒエラルキーの凄まじさに凍り付いてしまう。字幕も吹替えもなし。実際の聾唖者たちによる手話によって、ドラマは進んでいく。観る者は必然的に主人公の置かれている状況と前後の展開、手話に込められた感情と顔の表情で内容を推し量るしかない。それゆえに観る側は、通常の映画とは比べものにならないほどの集中力でスクリーンを凝視することになる。

 主人公は純朴そうな若者セルゲイ(グレゴリー・フェセンコ)。どうやら聾唖学校への転入生らしい。全寮制の学校で、セルゲイはなかなか自分の居場所を見つけることができない。校内は族(トライブ)が仕切っており、セルゲイは校舎裏に呼び出されて裸にされ、族のリーダーからボディチェックを受ける。さらに族のメンバーが囃し立てる中、腕力自慢の男子生徒たちにかわいがられることに。新顔への手荒い歓迎会だ。ここでセルゲイは予想以上のタフさを見せ、複数人を相手に互角にやりあってみせる。セルゲイはリーダーに気に入られ、族の一員として迎え入れられる。校内でのカツアゲに留まらず、聾唖学校で作ったと思われるお土産品の実習販売に見せかけて、列車内での窃盗にも励む。セルゲイは族の中で実力者として頭角を現わしていく。

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