韓国で大ヒット! ドラマ『未生』に見る、“日本以上にシビア”な韓国非正規社員の実態とは
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昨年末に韓ドラ史を塗り替えた、話題のドラマがある。『未生』(2014年tvNドラマ)がそれだ。このドラマ、有料放送であるにもかかわらず、民放を含む同時間帯視聴率1位(一部年齢層を除く)を記録。囲碁の世界で天才と称され、プロの道を目指した主人公が、夢を諦め、26歳で一流貿易会社のインターンとして働くことに。貧困家庭で育った高卒の主人公が、周りにバカにされながらも必死に努力し、成長していく姿を描いている。一見するとよくあるサクセスストーリーに思えるが、既存のドラマと大きく異なるのは、出生の秘密や四角関係、記憶喪失といったような、韓ドラではおなじみの要素がまったく登場しないところにある。それだけではなく、財閥や悲劇のヒロインすら出てこない。にもかかわらず、ヒットした理由はどこにあるのだろうか?
その一番の要因は、等身大の若者を主人公に据え、韓国の厳しい“格差社会”の現実と、サラリーマンの悲哀をリアルに描いたところにあるだろう。本作は、韓国の契約社員の実情や低賃金問題、離職率の問題、セクハラ問題などがこと細かに描かれているのが特徴で、実際、韓国の非正規雇用問題は日本以上に深刻だ。昨年8月には、パートタイマーを含んだ非正規社員の数は600万人の大台を突破。6~8月の正社員の平均月収は260万4,000ウォン(約28万7,000円)だったのに対し、同時期の非正規社員の平均月収は145万3,000ウォン(約17万2,000円)にとどまっている。下請け会社の非正規雇用者を簡単に解雇したり、差別したりというのは日常茶飯事。学歴や男女差別もある。そんな理不尽な立場に立たされている契約社員の姿を、あざとい演出なしに丁寧に描くことで、視聴者の共感を呼んだのだ。
そんな『未生』フィーバーは放送終了後、4カ月以上たった現在でも続いていており、本作に対するSNSを中心にネットへの書き込みは後を絶たない。中には「サラリーマンの教科書」と絶賛する若者や、「まるで自分の会社の話のようだ」と共感する声も多い。
韓国のマスメディアも、毎日のように『未生』の話題をひっきりなしに取り上げ、ヒットの要因を分析する研究者まで出てくるほどだ。すでに、続編も製作中だという。
ただし、『未生』の大ヒットは、現代韓国の社会問題の深刻性の反映でもある。そう考えると、手放しで喜んでばかりいてはならないのかもしれないが。
(文=平松相善)
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