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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 松岡茉優のロケが面白すぎる
週刊!タレント解体新書 第24回

女優・松岡茉優のロケが面白すぎる3つの理由 フジテレビ系『正直さんぽ』(4月11日放送)を徹底検証!

(2)無言のリアクションが面白すぎる

 ワイプ全盛時代の現在において、基本的には無言というリアクションはあり得ない。よっぽどのことでもない限り、その場で求められた的確な言葉を発して、カメラを自分に向けさせるというのが現代の主流である。

 だが松岡茉優は、ワイプタレントとは一線を画している。あまりにも堂々と、無言でリアクションを行う。たとえば柳原可奈子がおかしなことを口にしたとき、何も言わずに目を見開いて「?」という顔を向けるというリアクションを披露する。決して出しゃばらない。そしてそれは、言葉によるツッコミが応酬する現代の流れとは別軸にあり、どこか懐かしく、ほっとさせてくれるものでもある。

 おいしいものを食べたときもそうだ。ステーキ店で肉を食べた際、何も言わずに無言でガッツポーズをする。それだけで、おいしいということは伝わるのだった。想いを伝えるのに、言葉が必要だというのは錯覚である。松岡茉優は言葉に頼らず、表情や動きで感情を表現する。それは、女優としての顔も持つ松岡茉優だからこそできる、新たなリアクション像なのだ。

(3)無意識な自然体が面白すぎる

 すでに述べたように、松岡茉優のロケの面白さは、人としての面白さだ。もちろん『正直さんぽ』の独特な自由な雰囲気がそれを可能にしているわけだが、それでもやはり、松岡茉優の無意識な自然体はちょっとどうかと思うくらいには面白い。たとえばこの回は、いちご狩りでいちごを食べる。そのときの松岡茉優の感想はこうだ。

「目がしみるぐらい! あん? 目がしみる……? (気付いて)目が覚めるぐらい甘いです!」

 完全に間違っている。人はあまり、いちごを食べて目がしみるということはない。だがまあ、そこはよい。重要なのは、この間違ったセリフを口にした後に、一切何もなかったかのようにそのまま次の動作に移るという点だ。ここで、誰かにツッコミを入れさせたり、あるいは自分で、おかしなこと言っちゃった的なフォローを入れることがない。ここがすごい。つまり松岡茉優は、笑いを取りに行っているわけではない。カメラの前で、そのままの姿で、普通に過ごしているのだ。

 それが最も分かりやすく映ったのが、同じくイチゴ狩りの場面だ。松岡茉優は「あれ食べたい!」と少し遠くのイチゴを目にして畝(うね)をまたぐのだが、そのときに完全に尻をカメラに向けている。共演者や視聴者どころか、カメラすら気にしていない。だが、それがまったくく下品ではないのだ。松岡茉優にはよこしまな気持ちなどなく、ただ単純に遠くのイチゴを取ろうとしている。その純粋な欲求が伝わるからこそ、下品には映らない。女性タレントというよりも、むしろ子どもや動物を見る感覚に近い。この無意識な自然体は、やはりほかのタレントでは真似ができないのだった。

 松岡茉優は人間の面白さを見せる。そのロケのスタイルは現在の主流とは少し離れているが、しかしどこか懐かしい面白さにあふれている。この純粋な面白さは、これから先どのような形で進化を遂げるのか。いずれにせよ松岡茉優、2015年再注目の女性タレントであることは間違いないだろう。

【検証結果】
 冒頭でも述べた通り、現在の“女性タレント枠”に最も必要とされている資質はワイプにある。あるいは、ワイプは女性タレント、ロケは芸人さん、という形での棲み分けが暗黙のうちにされている空気があると言っていいだろう。そしてワイプ芸とは、批評的な感覚が必要とされる。もちろんその感覚とそこで研ぎすまされた技術は評価されるべきだが、テレビはそれだけではない。ひな壇では輝かない才能もある。松岡茉優という才能はまさしくそういった種類のものであり、これから先、ロケという戦場で彼女が新しいテレビのあり方を提示してくれることを願ってやまない。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa

最終更新:2015/04/17 18:00
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