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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 真の芸術が生まれる『セッション』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.318

体罰&モラハラの洗礼から真の芸術は生まれる? サディスティック教師の流血指導『セッション』

session041603.jpg映画館でバイトしているニコル(メリッサ・ブノワ)はフツーの大学に通うフツーの女の子。音楽には詳しくないけど、笑うと笑顔が素敵だった。

 人間は極限状態に追い詰められることで覚醒を始める。『イミテーション・ゲーム 天才数学者とエニグマの秘密』(公開中)の主人公である英国の数学者アラン・チューリングは第二次世界大戦中に暗号解読機を開発し、それがベースとなってコンピューターが生み出されることになる。コンピューター誕生の背景には、対ナチスドイツ戦という特殊な社会状況があった。『セッション』では天才か凡人かまだ定かではない若者ニーマンが一線を踏み越えて覚醒を果たすかどうか、そのギリギリの攻防を新鋭デイミアン・チャゼル監督はスリリングに描く。

 チャゼル監督が高校時代の実体験をもとに『セッション』を撮ったのは27歳のとき。わずか19日間の撮影期間で、この傑作を撮り上げた。徹夜続きでほとんど寝ていなかったチャゼル監督は撮影期間中に主人公ニーマンさながら自動車事故を起こし、病院に担ぎ込まれている。脳震とうの疑いがあったが、撮影スケジュールを守るために翌日には撮影現場に立っていた。大学時代に映画を1本撮り、コンサート会場を舞台にしたサスペンス『グランドピアノ 狙われた黒鍵』(13)に脚本提供していたチャゼル監督だが、実質的な監督デビュー作といえる『セッション』を完成させるまでは死んでも死に切れないという強迫観念が彼を突き動かしていたようだ。

 物語のラスト10分、フレッチャーとニーマンの白熱のセッションが繰り広げられる。もはや、どちらが教師か生徒かは関係なかった。善悪の彼岸に立った2人のセッションは、此岸にいる我々の心さえも激しく揺さぶり続ける。
(文=長野辰次)

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『セッション』
製作総指揮/ジェイソン・ライトマン 監督・脚本/デイミアン・チャゼル 出演/マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ、ポール・ライザー、オースティン・ストウェル、ネイト・ラング 
配給/ギャガ 4月17日(金)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国順次ロードショー
(c)2013 WHIPLASH, LLC All Rights Reserved.
http://session.gaga.ne.jp

最終更新:2015/04/16 18:00
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