体罰&モラハラの洗礼から真の芸術は生まれる? サディスティック教師の流血指導『セッション』
#映画 #パンドラ映画館
ムチで打たれたような衝撃がある。映画でここまでの体験をしたのはいつ以来だろうか。映画『セッション』の原題は『Whiplash(ムチ打ち)』。パワーハラスメントやモラルハラスメンなんて言葉はここには存在しない。弱肉強食、体罰上等! それでもOKなヤツだけ徹底的に鍛えてやるぜ。そんなサディスティックな鬼教師と音楽の世界で名前を残すことを願う野心満々な青年との狂気の師弟関係を描いたドラマだ。真の芸術はモラルや常識といったしがらみから遠く離れた世界にこそ生息することを教えてくれる。低予算のインディペンデント作品ながら、今年のアカデミー賞で作品賞ほか主要5部門にノミネート。鬼教師J・K・シモンズが助演男優賞を獲得するなど3部門で受賞を果たした。
SM音楽ドラマ『セッション』の主舞台となるのは米国屈指の名門音楽院。ニーマン(マイルズ・テラー)は偉大なドラマーになることを夢見て入学してきた。有名なフレッチャー教授(J・K・シモンズ)が指揮する「スタジオ・バンド」に参加したいと考えている。フレッチャーのお眼鏡に適えば、音楽業界での成功は約束されたも同然だからだ。ある日、新入生たちで組んだ新人バンドの練習をフレッチャーが覗きに現われる。緊張しながらも演奏してみせる新入生たち。「スタジオ・バンド」の練習に来るように呼ばれたのは、控えドラマーのニーマンだった。この日のために、フレッチャー好みの早打ちの練習をニーマンは積んでいた。友達がいない彼はうれしさのあまり、いつも通っている映画館の売店に勤めている女の子・ニコル(メリッサ・ブノワ)をデートに誘う。自分から女性に声を掛けるなんて到底出来ない内気な性格だが、万能感みなぎる今ならどんな夢でも叶えることができそうだった。
だが、ニーマンの幸せな学生生活はここまで。フレッチャー教授に呼ばれて参加した「スタジオ・バンド」での地獄の日々が始まる。全米から才能のある若者たちが集まった音楽院の中でも、「スタジオ・バンド」はエリート中のエリートぞろい。このメンバーの中で正ドラマーの座をつかむのは容易ではない。「演奏を楽しめ」というフレッチャーの優しい言葉に安堵してニーマンは初演奏を披露するが、フレッチャーの顔色が一瞬で変わる。椅子を投げつけられた上に「クズでオカマ唇のクソ野郎!」と罵倒される。「スタジオ・バンド」に参加した初日、ニーマンは子どものように泣きじゃくるしかなかった。
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