『ラブプラス』内田明理Pに聞く「コンシューマーゲームはなぜ、ソーシャルゲームに敗北したのか」
#インタビュー
――先日、任天堂がDeNAが資本業務提携関係を結んだ上で、開発中の新ハード「NX」や3DS、Wii Uなどの複数デバイスをつなぐ会員サービスをDeNAと共同で開発していくと発表がありましたね。コンシューマーゲームを愛するゲームユーザー側には、いわゆるソーシャルゲームやアプリゲームを格下に見ていた部分は間違いなくあると思います。その格下のはずのソシャゲ企業がコンシューマーのトップ企業である任天堂と手を組んで新たなハードを作るというニュースに、今はコンシューマーゲームというものへの考え方を、さすがに誰もが改める時期なのではないかと感じました。
内田 やっぱり無料のソーシャルゲームと、コンシューマーゲームのファンの出会いが悪すぎたんですよね。そのショックが大きすぎて、まだ誤解している方もたくさんいると思いますし、感情的に「スマホのゲームは悪だ!」と考えている方も少なからずいます。
でも、いまやスマホもタブレットもスペックとしては最先端ですし、しかも、携帯端末はそもそも持ち歩く必然があるので、そこでゲームを遊べることは誰にとっても便利じゃないですか。ゲーマーが注意すべきは、「それって、ゲーム(ビデオゲームからの流れの)じゃなくてギャンブルでは?」というところですよね。
人間の脳みそは、勝った負けた、取った取られたでアドレナリンが出て、条件反射で再び快感を得ようとします。ここにお金がかかってくるのがギャンブルで……というと、ギャンブルを否定しているように聞こえるかもしれませんが、判断力を持った大人が発散のためにギャンブルを嗜むことは、全然問題がないと思います。そういうの必要ですもん、大人には。もちろん判断力がない人がハマるのはまずいので、古今東西、あらゆるギャンブルは規制されてきたわけですが。ただ、ギャンブルとして優れたタイトルとゲームプレイやキャラクターコンテンツを楽しむためのゲームを同列にして「儲かるほうがエライ!」となると、僕のような人間には厳しい世界ですよね(笑)。
――任天堂に限らず、最近は、かつてコンシューマーゲーム業界を支えた大手ゲームメーカーも、ソーシャルゲームやアプリゲーム主体に切り替えつつありますが。
内田 そうですね。多くの企業は、「もはやアプリの時代だ」となっているように見えます。そこで、アプリでもコンシューマー黄金期のようなメーカーブランド戦略に出るのは、自然な流れだと思います。ただ、アプリのゲームでもコンシューマーのようなリッチコンテンツの成功例が出始めたことで、今後はリッチコンテンツがアプリ市場のマスを握ると考えるのは危ないと思います。
さっきの話にも出たように、ファミコンの頃から国内「ゲーム市場」の圧倒的多数は暇つぶし層であって、その人たちは今も昔もリッチなコンテンツや複雑なゲームプレイにはあまり興味がないですから。
――ただ従来のゲームファンは、これまで彼らを魅了してきたようなストーリー、世界観、音楽、グラフィック、プレイ感覚の、いわば総合芸術のようなゲームが今後作られなくなるのではないか、という心配もしていると思います。
内田 よくわかります。でも、僕はそうならないと信じたい。大くくりの「ゲーム市場」としては、リッチコンテンツはマイノリティでも、人数規模は減るどころか、サブカル自体の支持層は年々拡大していて、もはや、従来のサブとかメインというカテゴライズが意味を失いつつありますから。それに、(プラットフォームが)スマホであることや、入り口が無料で、その後コンテンツに課金していくというスタイルは、優れたシステムだと思っています。
パッケージ販売しかない頃は、自分が楽しめるかどうかわからないゲームに6,000~7,000円出すという、それこそ賭けをしなければいけませんでした。でも、課金スタイルだと試しに遊んでみて、そこで初めて「これ楽しいから100円使ってみようかな」「次は500円使ってみようかな」という判断ができるので、ユーザーから見ても合理的でフェアなシステムだと思います。
ただ、このシステムだとスケールメリットを使った販売戦略が打ちづらいので、リリース前の開発費で冒険できません。だから、そこは作り手が工夫すべきです。工夫する方法がないかといったら、そんなことは全然ない。現状、アプリゲーム開発では、「とにかく安く始めて、うまくいったらお金をかけよう」という方法(実際は、うまくいったら「じゃあ、お金かけなくていいや」になりがちですが)か、「リスクを冒してリッチコンテンツで差別化しよう!」の両極に振れているようですが、その中間になるビジネスモデルとユーザーの開拓が、業界の当面の課題だと思います。
(構成=編集部)
●内田明理Twitter @Akari_Uchida
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