修羅場経験者ウディ・アレンが語る“恋愛の極意”奇術師の恋『マジック・イン・ムーンライト』
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恋愛とは男女の騙し合いである。恋する男と女はそれぞれ男優と女優であり、アドリブで筋書きのない芝居を演じ続ける。簡単に馬脚をあらわすのは三文役者であり、名優になればなるほど相手に心地よい夢を見させてくれる。ウディ・アレン監督の最新作『マジック・イン・ムーンライト』は、恋多き人生を送ってきたウディ・アレンが79歳にして辿り着いた恋愛観を主題にしたコメディ。ウディ・アレンの分身役を英国の実力派男優コリン・ファースが務め、米国の若手女優エマ・ストーンと恋に堕ちていく様子を描いている。
主人公2人の職業が、いかにもウディ・アレンらしい。コリン・ファース扮する英国人スタンリーは人気奇術師、対するエマ・ストーンは米国から欧州にやって来た売り出し中の占い師ソフィという役どころだ。観客を欺くことを生業としている奇術師と、インチキめいた予言でお金持ちたちからお金を巻き上げる占い師が、お互いに騙し合いながらも心を惹かれ合っていく。
ウディ・アレンは『スコルピオンの恋まじない』(01)では犬猿の仲の男女が催眠術で恋に陥るドタバタを描き、『タロットカード殺人事件』(06)ではアレン自身が売れないマジシャンを演じ、主演のスカーレット・ヨハンソンとちゃっかり共演した。『さよなら、さよならハリウッド』(02)でウディ・アレンが演じた主人公の職業は当初は映画監督ではなく、マジシャンを考えていたそうだ。スタンダップコメディアンとして人気が出る以前のウディ・アレンは手品の修業を積んでいた時期もあり、ウディ・アレン作品には魔術師、霊媒師、占い師といったうさん臭い職業の人たちが頻繁に登場する。そんな怪しい職業同士の男女が惚れ合ってしまったらどんな展開が待っているのかを、アレン翁は明るい南仏を舞台に軽快に綴っていく。
時代は1920年代と、これまたウディ・アレンが『ミッドナイト・イン・パリ』(11)でも描いたお気に入りの時代設定。スタンリー(コリン・ファース)はステージ上では中国人奇術師ウェイ・リン・スーと名乗り、華麗なイリュージョンで観客からの喝采を集めていた。そんなスタンリーの楽屋を、古くからの友人ハワード(サイモン・マクバーニー)が訪ねてきた。資産家のカトリッジ家に最近占い師が出入りするようになり、すっかりカトリッジ家の人々をたぶらかしている。その占い師のインチキを暴いてほしいと。無神論者で現実主義者のスタンリーは、人の鼻を明かすことができるこの依頼に興味津々。婚約者とガラパゴス諸島へ旅行する予定を延期して、カトリッジ家の別荘のある南仏コートダジュールへ。そこでスタンリーを待っていたのは、インチキ占い師には見えない、明るくて健康的な米国人女性のソフィ(エマ・ストーン)だった。
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