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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 安川惡斗の『がむしゃら』人生
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.314

いじめ、暴行、闘病からの逆転人生『がむしゃら』女子レスラー安川惡斗は逆境でこそ存在感を増す

gamushara02.jpg2012年にプロレスデビューした安川惡斗は、看板レスラー・愛川ゆず季に全力で噛み付いていくことでヒールレスラーとして覚醒していく。

 『がむしゃら』を撮った高原秀和監督は、日本映画学校の講師を務めていたことから、18歳の頃からの安川を知っていた。ドキュメンタリーの中で「お前はお前のままでいいんだ」という言葉が支えになったと安川は語っているが、この言葉を投げ掛けたのが高原監督だった。「プロレスは相手と全力でぶつかり合う。プロレスをやれば性格が変わるぞ」と、プロレス界入りする前の安川に話していたのも高原監督だった。演劇の世界を知って、引きこもり状態を脱した安川だが、まだ映画学校時代は他人と目を合わせて話すことがうまくできなかったらしい。安川が変わっていく10年間を見守ってきた高原監督だからこそ、『がむしゃら』は生々しさに溢れるドキュメンタリーとなった。

 安川と高原監督との信頼関係を強く感じさせるのは、安川の里帰りシーンだ。米軍基地があることからジェット戦闘機の轟音が常に響く三沢市に帰ってきた安川は、高原監督を思い出の公園へと案内する。ここは活発だった少女時代によく遊んでいた場所というだけでなく、中学2年のときにレイプ被害に遭った場所でもある。学校帰りに公園で年上の男たちに襲われ、暴行を受けたことは家族にも学校関係者にも話せなかった。「子宮が痛い」「人間って少しずつ壊れていくんだと分かった」と泣きそうな顔で笑ってみせる安川。自分の暗黒時代を包み隠さずに語る安川に対し、高原監督は目をそむけることなくカメラを回し続ける。

 プロレスと出会ったことで、自分が輝くことができる場所を見つけた安川。だが、プロレスラーとしてのデビュー後も逆境の連続だ。腕立て伏せが一回もできないという体力的ハンデは、スターダムでの練習後に別のトレーニングジムに通うことで懸命にカバーしたが、白内障、バセドー病、頸骨損傷と次々とドクターストップが掛かる。でも、その度に彼女は這い上がり、リングに復帰してみせた。全女時代からキャリアを積み、スターダムの重鎮となっている先輩レスラーの高橋奈苗は「プロレス力は人間力。安川はたくましくなってきた」と成長ぶりを認めている。世IV虎が安川のことを「はっきり言って、嫌いです」と口にするシーンもあるが、それはレスラーとしての技量以上に安川が目立つことに対して彼女なりに苦言を呈していたようにも感じられる。

 試写室で安川に、自身が主演を務めたドキュメンタリー映画『がむしゃら』の感想を尋ねてみた。

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