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日刊サイゾー トップ > 海外  > 北朝鮮人に人生相談してみた
根なし草ライター・安宿緑の「平壌でムーンウォーク」

意外にシンプルでフランク!? ゴチャゴチャ悩んだら……「北朝鮮の人に人生相談」のススメ

 通常はそこで心が折れるところですが、そこまで拒絶されると、逆に泳いででも入国してやりたい気持ちが暴走し、勝利条件を「何がなんでも入国」に設定した私はうわ言のように「入国、入国、さっさと入国……」とつぶやくようになっていました。ここらへんはウソですけど。

 そこで登場した選択肢が、日本国籍の取得または韓国パスポートの取得だったわけです。日本国籍取得はさておき、私の場合は本籍地が朝鮮半島の最北であり、その上、韓国側の親族とは縁がなく、当時は渡航したこともなかったので抵抗感を禁じ得ませんでした。それで長期間かけて日本人、同胞問わず、たくさんの人に相談しました。

「世界には、もっとひどい立場の難民がいる」
「そんなこと言ったら、三都主(アレサンドロ)やハーフナー・マイクはどうなる」
「サウスだろうがノースだろうが、外国から見たら区別がつかない」
「人生は短い。自己実現のために国籍を変えるのは罪ではない。ましてや、北か南かだけの差だというのに」

 結局、決定打になったのは、「分断されているうちはどっちも正式な国とは言えないから、どっちでもよい」という身内の言葉でした。

 とはいえ、心情的には簡単に割り切れるものでもなく、その後もゴチャゴチャと悩んでいました。ほかにも某国入国管理局とのやりとりなど、書き切れないエピソードがありますが、今回の趣旨とは無関係なので割愛します。

 そこで訪朝時、バーで一緒に飲んでいた案内員に、その一部始終を話しました。北朝鮮の人は私のようなケースにどう反応するのか試してみたい気持ちと、話すことでなんらかの理解を得たいという気持ちが半々でした。すると早速、同席していた在日コリアンのテレビ局員(※生まれながらの韓国籍者)が「お前、そんなことで変えるなんて、どうかしてるな。この裏切り者!」という趣旨のことを言ってきましたが、案内員の一声で話は終了しました。

案内員「えっ、別にいいじゃん。そういうのは」

 まさかの一言スルー。人生相談というより、私の単なるこだわりの吐露でしたが、北朝鮮当局の人にそう言われたおかげで心が少し軽くなったような気がしたのは確かです。韓国籍を奨励しているわけではないでしょうが、私の語りぶりが面倒くさくて早く終わらせたかったのかもしれません。

 「仕事上、そうせざるを得ない人がいるのも理解してる」「気持ちが大事だから」とも言っていましたが、私が長い間、夜も眠れないほど悩んだのは一体なんだったのかと、少し拍子抜けしました……。ほかの案内員も同様のことを言っていたので、次回機会があれば、彼らの国家と国籍観について深く聞いてみたいと思います。

 以上、北朝鮮版人生相談でした。もっと込み入った相談がしたいという方は、次回訪朝できた場合に聞いてみたいと思いますので、ご連絡ください。怒られない範囲で聞いてきます。人選はランダムになります。

●やす・やどろく
ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

最終更新:2015/03/17 21:00
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