まじめな女子大生が踏み込む、禁断の世界『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』
#映画
今週取り上げる最新映画は、女性視点で愛を描いた英米ベストセラー小説をフレッシュなキャストで映像化した話題作2本。まじめな女子大生が踏み込む禁断の世界に、難病を抱えた女子高生が経験するさわやかな恋愛と、好対照なストーリーの2作品でもある。
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(公開中、R15+指定)は、ロンドン在住の一般女性がネットに投稿し、書籍化されて世界50カ国で累計1億部を突破した官能恋愛小説の実写化作品。文学部の女学生アナは、学生新聞の取材で若くして成功した起業家のグレイにインタビューする。これをきっかけに、恋愛経験のないアナと、少し傲慢だが魅力的なグレイは急接近。だがグレイから、交際する女性が厳守するルールを記した秘密保持契約書を提示されたアナは、彼が抱える闇と特殊な性的嗜好を知ることになる。
俳優ドン・ジョンソンと女優メラニー・グリフィスを両親に持つダコタ・ジョンソンが、本作で映画初主演。奥手の女子が、愛する男性の手ほどきを受け官能に目覚める過程を、やや細めの裸身をさらして大胆に演じた。グレイに扮するモデル出身のジェレミー・ドーナンは当然イケメンで、彼を取り巻くオフィスと自宅のリッチな環境も美麗に映し出され、女性でなくとも嘆息してしまう。日本公開では観客層を広げる狙いから、セクシャルなシーンで思い切ったボカシを入れてレイティングを下げたが、これが果たして吉と出るか凶と出るか。
『きっと、星のせいじゃない。』(公開中)は、米作家ジョン・グリーンの小説『さよならを待つふたりのために』(岩波書店刊)を原作に、若手人気女優のシャイリーン・ウッドリー主演で映画化した青春ラブストーリー。甲状腺ガンが肺に転移して酸素ボンベを手放せない16歳の少女ヘイゼルは、骨肉腫で片脚を切断した青年ガス(アンセル・エルゴート)と出会い、互いにひかれあう。まっすぐに気持ちを伝えるガスに対し、自分の病状に悲観的で深い関係になることを恐れるヘイゼル。慈善団体の援助により、お気に入りの小説家(ウィレム・デフォー)に会いにオランダへ旅立った2人を、思いがけない展開が待ち受けていた。
『(500)日のサマー』(09年)を手がけた脚本コンビ、スコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバーが原作を効果的に脚色。本作が長編映画2作目となる新鋭ジョシュ・ブーン監督が、感情に寄り添う自然な演出で見事に映像化した。ウッドリーは目や表情の繊細な演技で、出会いに高揚し、相手を想い、周りを傷つけることに苦悩するといった、誰もが経験する感情を説得力十分に表現。重いテーマを扱いながらもシリアスになりすぎず、軽妙なユーモアとポップな音楽も効いている。難病の若いカップルのストーリーを通じて、普遍的な人生の問いかけと温かいメッセージを語りかけてくる快作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』作品情報
<http://eiga.com/movie/80687/>
『きっと、星のせいじゃない。』作品情報
<http://eiga.com/movie/80470/>
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